15歳から15年間無月経だったマラソン千葉真子 無知ゆえに現役時代に覚えた妊娠への不安
不確かな「生理のウワサ」に惑わされた現役時代
当時はスマートフォンでちゃちゃっと調べれば、誰もが簡単に生理の知識を得られる時代ではない。情報が少ないうえ、陸上競技に没頭していた千葉さんの生理の知識は、「ウワサの類」だけだった。
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「高校卒業後は実業団に進みましたが、その頃に『今、生理がなくても競技をやめたらくるらしいよ』と耳にしました。世間知らずで陸上ばかりやってきた私は、『あ、そうなんだ! じゃあ、なくても心配しなくていいんだ』と思い込み、安心してしまいました。
20代の半ばのことですが、『移籍してきた選手が監督に、生理2日目はお腹が痛いので練習を休むと言ったらしいよ』とチーム内でウワサになったんですね。当時は、選手がそんな申し出をすることさえ珍しかった時代。私も『へぇー。そんな人いるんだぁ』とビックリしたことを覚えています」
一方で、千葉さんはぼんやりと、「引退後は結婚して、子供を産みたい」と競技後の人生をイメージしていた。
「『そういえば(生理が)ない!』と思ったのは20代も後半。しかも、生理のない期間をよくよく数えてみると、すごい年数になっている。そのとき初めて、『こんなに長い間、生理がなくて、本当に大丈夫なんだろうか?』と考えるようになりました」
そもそも、現役をやめたら生理がくるというウワサは本当だったのか? いくらなんでも妊娠はできないのではないか――。将来の不安と、子どもを産みたい気持ちとが入り混じるなか、しかし、医者にかかることもできなかった。その理由も、やはり「ウワサ」の影響が大きかった。
「『薬での治療を始めると、女性らしい体つきになる』。そう聞いていたので、体重が増えてしまい、競技のために今までやってきたことは何だったんだ、となるのが怖かったんです。
太ったら選手として終わるのではないか、治療を始めたら競技を諦めないといけないのかなと思うなかで、やっぱり指導者には相談できなかった。親にも心配をかけたくなくて、言えませんでした」
そして、06年、千葉さんは30歳で引退する。
「選手としてはやり残したこともありました。でも、結婚・妊娠のことを考えると、無月経の治療もあるし、当時は彼氏もいなかったし(笑)、30歳がタイムリミットだと考え、引退を決めました」
ところが引退後すぐ、15年間なかった生理が再開。「本当に、きつねにつままれた気持ちだった」と振り返る。
「何事もなかったように、毎月、きちんと生理がきたので、びっくりしました。また、結婚後、幸いにもすぐに子どもを授かり35歳で妊娠。恥ずかしながらそのとき初めて、産婦人科に行きました」