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隠れていたフィギュア選手の生理問題 鈴木明子の告白「選手時代、私は間違っていた」

現役時代は「ゆがんだ認識」に陥っていたと鈴木さんは明かす【写真:松橋晶子】
現役時代は「ゆがんだ認識」に陥っていたと鈴木さんは明かす【写真:松橋晶子】

「私は競技生活の間ずっと、シーズン中、生理が止まっていました」

 ところが大学入学と同じ頃、摂食障害に。その後の2年間、生理が止まってしまいます。

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 摂食障害になって初めて、治療のため、レディースクリニックを受診。骨密度や血液などあらゆる検査を受け、先生と話をし、女性にとって月経が止まることがどんなに危険かということも知りました。

 幸いにも治療がうまくいき、競技生活に復帰したら、生理のことは再び頭から抜け落ちてしまった。生理は始まったものの、周期は安定しないままでした。

 そしてもう一つ。私は競技生活を送っていた間ずっと、シーズン中、生理が止まっていました。

 フィギュアスケートは、主要な大会が9月頃から始まり、3月の世界選手権でシーズンが終了します。毎年、8月の合宿から追い込みをかけるのですが、その時期になるとパタンと生理が止まり、シーズン終了の翌月からまた、生理が始まる。毎年、この繰り返しでした。

 私はもともと体脂肪が多いほうではなかったうえ、きつい練習が続くと体脂肪がどんどん落ちていき、みるみる体が絞られました。すると、ある瞬間から生理が止まる。このときにいつも、「あ、自分はちゃんと追い込めているな」と安心していたんです。

 逆に、生理が止まらないと「まだまだ追い込みが足りないんだ」「体が絞れていないとコーチに思われてしまう」とますます追い込んだ。しかも、シーズン終了の翌月にはちゃんと生理がきていたので、体重・体脂肪の減少だけが原因ではないのは明らかなのに、です。

 いま振り返ると、生理が止まったのは、精神的な影響がとても大きかったのではないかと思います。当時の私にとって生理が来るのは、選手として「よくないこと」だったし、「生理は悪」。今思うと、ものすごく怖いし、ゆがんだ認識だとわかりますが、この考えが頭に刷り込まれていたので、まったくおかしいと感じていませんでした。

 本来、スポーツは「体にいいこと」かもしれません。でも、アスリートでやっていくとなると、毎日が無理ばっかりです。体も心も、追い込んで、追い込んで、時には人としての限界をも超えてしまう。だからこそ選手たちは、自分に優しくすることも大事にしてほしいと思います。

 例えば、生理が止まったら、そこに疑問を持つことも一つです。「あれ?」と思うことがあったら、今、自分の体や心に何か違うことが起きているのかな、という疑問がどんどん湧き出てほしい。

 一方、どんなに辛くても、生理が止まっても、やっぱりオリンピックが近づいてきたら、そんなことを気にしていられない。自分の体がどうであれ、今、ベストを尽くすしかないって思う気持ちもよくわかる。私自身も29歳まで選手を続けていなかったら絶対に、女性として、人としての生き方を、ここまで俯瞰的に、客観的に見ることができなかったと思います。

 だからこそ、「自己管理をしっかりしろ」なんて選手にだけ背負わせるのはいうのは酷だと言いたい。大事なのは本人だけでなく、指導者やスタッフ、そして家族を含め、皆が正しい知識を認識し、共有すること。これができれば「それはおかしいよね」と誰かが声を上げることができます。

 体つきが丸みをおびてくること、生理を迎えること。こういった人の成長は本来、生まれた瞬間から一つひとつが喜ばしいものです。アスリートも選手であるまえに、人間ですから、「成長したらダメ」と思い込むなんて、おかしなことですよね。

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鈴木 明子

THE ANSWERスペシャリスト プロフィギュアスケーター

1985年3月28日生まれ。愛知県出身。6歳からスケートを始め、00年に15歳で初出場した全日本選手権で4位に入り、脚光を浴びる。東北福祉大入学後に摂食障害を患い、03-04年シーズンは休養。翌シーズンに復帰後は09年全日本選手権2位となり、24歳で初の表彰台。10年バンクーバー五輪8位入賞。以降、12年世界選手権3位、13年全日本選手権優勝などの実績を残し、14年ソチ五輪で2大会連続8位入賞。同年の世界選手権を最後に29歳で現役引退した。現在はプロフィギュアスケーターとして活躍する傍ら、全国で講演活動も行う。

長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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