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月1~2kgで「太った!」と焦る女子選手 生理前に増える体重は「あまり気にしないで」

大事なのは「月経サイクルに伴う自分の体重の変動」を知ること

 実は体重が増える生理前は、基礎代謝が増える時期でもあり、体は多くのエネルギーを欲します。そのため、「食欲が増す」「体重が増える」「胸やお腹に膨満感がある」「体がむくむ」といったさまざまな変化を感じやすく、パフォーマンスへの影響やコンディショニングに不安を抱えがちです。

「生理前に体重が増えるので、何かよい対処法はありますか?」という質問は、学生からもよく受けます。ただ、ここで私が一番伝えたいのは、「あまり気にしないでほしい」ということです。

 月経サイクルに伴う体重の変動は、毎月、繰り返されますし、体脂肪ではなく水分によるものなので、即減量が必要、というものではありません。「女性であれば計ったタイミングによって2kgぐらいの増減は当たり前にある」と思い、気にしすぎない。それがよいコンディショニングにつなげるポイントになります。

 大事なのは、月経サイクルに伴う自分の体重の変動を知ること。「私は生理前になるとこのぐらい増えるな」と知っていれば、1kg、2kgの増量や減量に一喜一憂しなくなります。また、たまたまチーム内での体重測定が生理前の増量期にあたったとしても、「今は生理前で増えていますが、すぐ落ちるから大丈夫です」と指導者にも説明できます。何より、「こんなにダイエットを頑張っているのに……」とショックを受けたり、「もっと痩せないとダメだ」「水分や食事を減らせばいい」などと、自分を責めたり、追い詰めたりすることもありません。

多くの女子アスリートは月経サイクルに伴う体重の変化がみられ、体内の水分量の変化によって月1~2kgの増減が自然に起こる【デザイン:野口佳大】

 また、指導者側も女性ホルモンによる体内水分の増加が数値に影響することを理解し、「先月より2kg増えているじゃないか!」と頭ごなしに言わず、「生理前ということはない?」「少し様子をみて考えようか」など、数字だけを追わないコミュニケーションを大切にしてほしいと思います。

 なかには月経サイクルによって体重が左右されない人もいますし、階級制の競技の場合、計測日に向けて数値を厳しく調整することも必要です。しかし、日々の練習や試合に臨むなかでは、「生理前も体重を増やさないためにどうすればいいか?」ではなく、「増える時期もいかによいパフォーマンスを維持するか」「コンディションを整えていくか」など、カラダの自然な変化を受け止めながら、競技に取り組んでほしいと思っています。

(長島 恭子 / Kyoko Nagashima)


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須永 美歌子

日本体育大学教授、博士(医学)。日本オリンピック委員会強化スタッフ(医・科学スタッフ)、日本陸上競技連盟科学委員、日本体力医学会理事。運動時生理反応の男女差や月経周期の影響を考慮し、女性のための効率的なコンディショニング法やトレーニングプログラムの開発を目指し研究に取り組む。大学・大学院で教鞭を執るほか、専門の運動生理学、トレーニング科学の見地から、女性トップアスリートやコーチを指導。著書に『女性アスリートの教科書』(主婦の友社)、『1から学ぶスポーツ生理学』(ナップ)

長島 恭子

編集・ライター。サッカー専門誌を経てフリーランスに。インタビュー記事、健康・ダイエット・トレーニング記事を軸に雑誌、書籍、会員誌で編集・執筆を行う。担当書籍に『世界一やせる走り方』『世界一伸びるストレッチ』(中野ジェームズ修一著)など。

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