“普通の女の子”にだって憧れる 空手・植草歩が抱いた「女子力と競技力」という葛藤
オシャレしていいの? オシャレのために「スポーツを辞めたいと思わなくていい」
「やることをやっていればいいんじゃないかなと思います。練習中に髪をいじったりしていたら『お前何してんだ』ってなるけど、練習後にオシャレして出かけるのだったらいいと思う。ルールに従ってやるのであればいいと思いますね。学校のルールとか、会社など組織のルールは絶対にあるので、そこには従わないといけない。帝京大は黒髪ショートだったので、そこはきちんと守っていました。
だから、高校の時も大学の時もオシャレしたいと思ったけど、オフの時にしようと思ったらできるし、かわいくしようと思えばいつでもできる。それをしたいから空手を辞めたいとか、スポーツを辞めたいとか、そういうふうに思わなくていいと思う。今の時代だからオシャレしても試合に行けるし。必要のないこともありますけどね。こんなことをしていたから負けたとか、自分に悔いが残らないのであれば、していいと思います。
自分はネイルしたり、髪を整えたりして試合に行く。それが『こうやってやったから私は勝てるんだ』と思うことができるし、逆にそれが『ネイルをしちゃったから試合に負けたんだ』と思うくらいなら、しない方がいいなと思う。捉え方次第ですね。自分がそれで強くなれるとか、幸せになれるならした方がいい」
アスリートと結婚に関しても同じことが言えるかもしれない。植草は周りに結婚した女子の空手選手が少ないこともあり、強い願望はない。これに関しても自分の捉え方や取り組み次第だという。
「(競技と結婚の)両方が欲しかったら、両方とれると思う。でも、その分結婚をしたら『結婚したから負けたんだ』と言われる可能性もある。それを背負っていかないといけないから、今までよりもっと自覚のある行動をしなければならないと思うので、それができるなら結婚すればいいと思います。
自分の場合はテレビの仕事(出演)をしていたので『テレビに出ているから植草は弱くなった』『筋トレばかりしていたから弱くなった』とか、そう言われたくなかったから結果に繋げたかった。そう思って勝ち続けた部分もあった。自分がそれを信念としてやり通せるなら、その人と一緒にいて自分が強くなれる、この人のそばにいるからオリンピックで優勝できるくらい強くなれると思えるなら、するんじゃないかなと思います」
決して調子に乗っているわけではなく、アスリートであろうとなかろうと、女性がオシャレに目覚め、メイクや身だしなみに意識を持つのは自然なこと。全ては自分次第。選択の自由はある。しかし、責任も付きまとう。最重量級で世界と戦う植草は今、体格の大きさをいじられた時に思う。
「昔は恥ずかしかったけど、今は『だって鍛えているもん』と思ってます。『綺麗でしょ?』って。トレーニングの成果が出ていて嬉しいなと思えますね」
信念を持った自分が選び、自分で取り組んだ結果。だからこそ胸を張れている。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)