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英国で普及を阻む「野球=卑怯者」の考え 強烈すぎるクリケットの存在と米国への本音

MLBのロンドン開催で感じた英メディアの報道姿勢

 そんな英国で、重鎮フットボールジャーナリストに野球について尋ねて思い出したのが、筆者が取材したレッドソックスとヤンキースのロンドン遠征2連戦での英メディアの報道姿勢だった。

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 2019年6月29日に行われた第1戦、当時ヤンキースの田中将大投手が先発して17対13という大乱打戦となり、9回を終えるのに4時間42分も費やしたが、英大衆紙「ザ・サン」の記事は「ホットドッグをはじめとするアメリカ風のお食事セットが24ポンド(約4000円)だった」というもので、試合内容にはまるで触れなかったのである。

 他紙は揃って、当時の英王室で話題を独占していたヘンリー王子とメーガン妃が始球式を行ったことを大々的に報じ、こちらも試合内容の報道は全くなし。

 また2連戦で12万枚のチケットを完売して、興行的には大成功を収めたが、この成果に対して英高級紙「ガーディアン」の見出しは「謎だらけのスポーツに大観衆」というものだった。

 この時、英衛星放送「スカイ・スポーツ」の英国人記者ジェレミー・ラングドン氏を取材したが、「私自身でさえ、これまで1度しか野球の試合を見たことがない。英国人の95%が野球に関心がなく、基本的なルールさえ把握していない」と、苦笑交じりに話していたのも印象深い。

 ただし、人口6000万人の5%は300万人。しかも英国は米国から一番近いヨーロッパで、ともに同じ英語を話す国。実際にレッドソックスとヤンキースの伝統の一戦に訪れた野球ファンの中には米国在住経験のある人が多く、このあたりには兄弟国である英国との絆も感じた。

 その一方で、これは当地に27年も暮らして実感していることだが、かつては植民地だった主従関係があることで、英国人には若干、米国を見下すところがある。歴史のない米国の文化を「拝金主義」「品格がない」「浅はか」というキーワードを使って語ることも多い。

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森 昌利

1962年生まれ、福岡県出身。84年からフリーランスのライターとして活動し93年に渡英。当地で英国人女性と結婚後、定住した。ロンドン市内の出版社勤務を経て、98年から再びフリーランスに。01年、FW西澤明訓のボルトン加入をきっかけに報知新聞の英国通信員となり、プレミアリーグの取材を本格的に開始。英国人の視点を意識しながら、“サッカーの母国”イングランドの現状や魅力を日本に伝えている。

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