英国で普及を阻む「野球=卑怯者」の考え 強烈すぎるクリケットの存在と米国への本音
英国の野球ファンは「かなりの天邪鬼」
そこで筆者は「なぜ君ほどのスポーツジャーナリストが、WBCに英国が参加していることを知らないのか」「それほど野球は英国でマイナーなスポーツなのか」とマークに重ねて質問し、本題に迫った。
【注目】応援のプロが楽しみにする『チアスタ!』での交流 チアリーダーHARUKAさんの想い
「結論から言って、英国人の野球に対する関心は薄い。やはりそれはクリケットのせいだろう。英国人にとって小さいボールを投げて打つというスポーツは、クリケットなんだ。わざわざ野球を見る必要がないと思っている。だから無論、誰もやらないし、ルールさえ知らない。しかしびっくりしたよ、我々に世界一を競う大会に送り出す代表チームがあるなんてね」
そして最後にもう一言、「大抵の英国人は、アメリカのスポーツを追わないものだ。フットボール(サッカー)が強烈すぎるんだ。話題も豊富で、他のスポーツを追う暇がない。だから、この国の野球ファンはかなりの天邪鬼だと思う」と話して、“イングリッシュ”としての本音を明かした。
この後、135万5000人のフォロワーを持つ英高級紙「タイムズ」の主任ライターであるヘンリー・ウィンター、そして昨年から英国フットボールライター協会の会長となった英大衆紙「デイリー・ミラー」の主任ライターであるジョン・クロスにも同じ質問をした。
マークもそうだが、ヘンリー、ジョンのご両人もサッカーのイングランド代表を追ってW杯取材をする超一流記者。その2人が、ともにWBCが野球のW杯の略称であることを知らず、マークと同様、母国がこの大会に代表チームを送ると聞くと驚いた。そして英国で野球が普及しない理由も、同じく「クリケットがあるから」と答えたのだ。
実は恥ずかしながら、かくいう筆者もこの原稿依頼があるまでWBCが今年開催されることを知らずにいた。英国暮らしが今年でトータル27年になり、今季はブライトンに三笘薫、アーセナルに冨安健洋、さらにはグラスゴーのセルティックにも古橋亨梧、旗手怜央、前田大然と有力選手が揃っている。フットボールの情報を追うのが精一杯だし、そもそも英国の有力スポーツメディアに野球の情報は全く見当たらない。