青学大Vの裏に厚底シューズ対策 活かし切れなかった機能性、1年間の筋トレ改革が成就
厚底シューズの反発力を最大限に活かすためのトレーニングに着手
薄底シューズでは、着地の際、いかに自分の脚で地面から受ける反発力を生み出し、推進力につなげるかが重要になります。
肝は前足部で着地後、後ろに流れた脚の膝をポンッと畳み込む力。なぜなら、きれいに素早く畳み込むと、それだけ次の一歩が大きく、そして素早く前に出るからです。そしてきれいに畳み込むには、ハムストリングスの筋力と瞬発力が必要。そのため、大腿四頭筋も大切ではありますが、青学大ではハムストリングスをメインにトレーニングを行っていました。
一方、厚底シューズの場合、カーボンの反発力によって、勝手に脚がポンッと畳み込まれます。しかし、その反発力を体がうまく活用できなければ、最大限スピードに活かすことはできません。それを可能にするため、新たに「大腿四頭筋」と「殿筋」、この2か所によりフォーカスしたトレーニングプランが必要だと考えました。
まず、前足部で着地した際、「大腿四頭筋」をしっかり使うことで、地面からの反発力を最大限、推進力に活かせます。ですから、太腿裏側のハムストリングスから表側の大腿四頭筋のトレーニングに、切り替える必要がありました。
次に、「殿筋」ですが、着地の際、衝撃をしっかり吸収する役目を担います。
厚底シューズを着用すると重心が高くなるため、フォームが不安定になります。すると、フォームの安定に働く下半身の一部の筋肉に、過剰な負荷がかかります。
実はこのことによる弊害は、2020年頃から見られるようになりました。以前は、長距離選手に起きる障害は、足底筋膜炎やシンスプリント、大腿骨の疲労骨折などが多かったのですが、日常的に内転筋や中殿筋が張るという訴えや、仙骨の疲労骨折、殿筋周りの障害が増加。これらのケガを防ぎ、かつフォームを安定させるためにも、殿筋群を鍛える必要がありました。
以上を踏まえ、新たなフィジカルトレーニングのプログラムを固めたのが3月末。そして4月中旬に原晋監督へトレーニングの方向転換の必要性を説明し、プログラムを提案。すぐに新たなトレーニングがスタートしました。
今シーズン、加わったトレーニングは3つ。
まずは、高重量のウエイトを使った下肢のトレーニング。これには大腿四頭筋と殿筋群の筋力をアップする目的があります。次に、エンコンパスというマシンを使った、ファンクショナルトレーニング。こちらは殿筋と背中の広背筋を連動させる筋肉の使い方を、体にインプットすることで、殿筋に過剰にかかる負荷を分散させる狙いがあります。この二つは選手個々にプログラムを作成しました。
さらに、全体練習でも、自重で行う下肢の補強トレーニングを新たに組み込みました。