「お腹が凹む」「痩せる」は誤解? 独り歩きする“体幹トレの知識”を正しく解説
「とりあえずプランクをやれば良い」も誤解
もう一つは「とりあえずプランクをやれば良い」という誤解です。
私はプロのアスリートから趣味でスポーツを楽しむ人、健康のために体を動かしている人まで、さまざまな方のトレーニングを担当していますが、非常に多くの方から、「体幹トレーニングを教えてほしい」という要望をいただきます。そこで、「これまで体幹トレーニングに取り組んだことがありますか?」と聞くと、多くの方が「プランクはやっています」と答えます。
プランクが良いと言われる理由にも、腹横筋の存在がよく挙げられます。「天然のコルセットである腹横筋を鍛えると体が安定するから」というわけです。
腹横筋がうまく働くと、胴体が安定し、腰椎への負担が軽減されるのは確かです。しかし、「腹横筋だけ鍛えれば安定する」というのは、コルセットをつけて走れば転ばない、と言っているようなもの。残念ながら、一つの筋肉だけを鍛えても体は安定しません。そもそもプランクで使われるのは主に腹直筋。それに比べて腹横筋への刺激はさほど大きくないのです。
体は全身の筋肉がバランス良く連動して働いた時に、初めて安定します。競技中のあらゆる動きのなかでバランスを崩さず動き続けるには、腹横筋を含むインナーユニットだけでなく、胴体の表層にあるアウターマッスル(腹直筋、腹斜筋群、広背筋)や付随する腱、反射神経も重要。また、骨盤を安定させるための臀筋群や、脊柱を安定させる起立筋なども必要。つまり体幹トレーニングとは本来、これらをトータルで磨くものであり、「腹部だけをガチガチに固める」トレーニングではありません。
また、必要とされる動作は競技によって異なるため、当然、体幹トレーニングの優先順位も競技によって異なります。プランクから入るのが有効な競技もあれば、そうでない競技もありますし、厳密に言うとどのタイミングで何から行えば良いのかは、その人の身体的特徴によっても異なるのです。
サッカーやラグビーでは、相手に当たられても簡単には倒れない強い体幹が、マラソンでは長距離を走り続けてもブレない体幹が求められます。テニスであれば、体幹部を大きくひねり、全身をバランス良く連動させながらボールにパワーを伝える動きが必要です。