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革新的ラグビーか、底知れぬ修正力か NZ対南アフリカ、W杯4強の激闘から占う頂上決戦の行方

10分未満の間に6点差から21点差に広げたNZの強さ

 そんな“掟”を感じさせる場面が、この試合でも何度もあった。

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 公式記録上では前半31分にアルゼンチンがPGを決めてスコアを6-12としたが、その直後にニュージーランドはリスタートの狙いすましたキックオフから2つのPKでPGを成功させてセーフティーリードを奪い返している(手元の時計ではアルゼンチンのPGは35分、ニュージーランドのPGは38分)。アルゼンチンが6点差に迫ったPGは、敵陣ゴール前で12次攻撃を仕掛け、アドバンテージをもらいながら、結果的にトライを決められずに7点(5点)を逃したという点でも惜しまれるが、ニュージーランドは追い打ちをかけるように相手の3点を帳消しにしている。

 数分後の前半インジュアリータイム(42分)には、自陣でのPKを起点に敵陣に攻め込むと、戦列復帰したWTBマーク・テレアの好走などによる12次攻撃からFLシャノン・フリゼルがトライを奪い20-6とした。

 さらに、ここで手綱を緩めないのが、この常勝チームの恐ろしいところだ。後半開始2分。14点差を追う“ロス・プーマス”にとっては、当然挽回を期してのキックオフリターンだったが、ニュージーランドは相手ノックオンによるスクラムを押し込み、アドバンテージを得る中でNO8アーディー・サベアからSHアーロン・スミスにつなぐサイドアタックでトライを仕留めている。

 アルゼンチンのトライチャンスに3点しか与えず12-6としたところから、わずか10分に満たないプレー時間の間に21点差(27-6)までスコアを広げてしまった。この抜け目のない、言い換えればチャンスを絶対逃さない凄まじい集中力に、ロビーさんが教えてくれた“オールブラックス”という、常に勝利が課せられるチームの真髄が窺い知れる。

 データでは、テリトリー、ポゼッション、ボールキャリーなど、いずれも勝者が若干上回っているものの、38点差がついたスコアに比べればかなり近似値になっている。スタッツ上では、アルゼンチンはそこまで悪い数値ではないのに完敗に終わっているのだ。

 数値の中で、顕著に差が出ているのがタックルだ。回数はニュージーランド185回、アルゼンチン192と大差ない中で、失敗数は23回、51回と敗者が倍近いミスを犯している。伝統的にアタックに強みを持つニュージーランドだが、このゲーム、大会に関しては防御の固さも際立っていた。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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