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ラグビー日本代表に何が足りなかったのか 過去最高レベルのW杯8強、死闘に見た「世界との差」

フランスの力に依存しないラグビーに驚き

 準々決勝を見ると、世界が挑戦的なアタックに挑んでいるのに驚かされた一方で、強固なディフェンスが勝敗に大きく影響しているという印象だ。前提にあるのは、世界のプロリーグが進化するなかで、強豪クラブや代表チームのコーチが力を注いできた、より高度に組織化した防御システムがある。

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 エディー・ジョーンズ氏が日本代表ヘッドコーチ(HC)に就任した2012年当時は、まだ世界のラグビーがアタックにウェートを置いた時代だった。同じ方向へと連続攻撃を仕掛けて相手の防御が薄まったエリアを攻めるスタイルを目指していた。

 だが、2015年大会前から世界は、そのアタックをどう防いでいくかに力を入れ始めた。シンプルに考えれば、ただひたすら目の前の相手にタックルをするのではなく、グラウンドの幅70メートルを、防御の選手15人が相手に抜かれずに埋めることができれば守り切れるという考え方だ。そのために、より明確な役割分担が個々の選手に与えられ、ミスで防御が破られた時のカバーをどうするかもしっかりと準備されていた。

 2016年から指揮を執ったジェイミー・ジョセフHCは、相手の強固に張り巡らされた防御の壁をキックで崩す戦術に力を注いできた。これは、ジェイミー独自の戦術ではなく、世界のトレンドに日本代表首脳陣も乗ったということだ。左右にボールを動かしても壁を破れないなら、前後も使ってスペースを作ろうという考え方だ。

 そんな流れの中で、今回の準々決勝でのフランスのキックオフからのアタックには驚かされた。序盤はあの巨大な南アフリカ選手を接点で押し込むコンタクトの強さを見せる一方で、フランスはその「力」に依存しないラグビーを仕掛けてきた。1歩でも前に出てからの密集からのパス展開が、まさに間髪を入れないスピードで繰り返され、次のフェーズでもボールを停滞させない高速ラグビーで勝負を挑んだ。

 フランス代表は伝統的に「シャンパンラグビー」と形容されてきた。個々の選手が状況判断をして、柔軟にプレーを変えてアタックを仕掛ける。決めごとよりも瞬時の判断、つまりアドリブを重視したアタックを弾けるシャンパンに例えたものだが、同時に伝統的に使われてきた「フレンチ・フレア(閃き)」を、ファビアン・ガルティエHCが今のチームにも落とし込んできたのが、この夜のフランスだった。現代版フレンチラグビーは、防御全盛の時代には新鮮な息吹のように8万観衆を沸かせたが、その結末は誰もがご存知の通りだった。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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