W杯フランス2023コラム、7大会連続取材「ラグビーライターの視点」

　ラグビーワールドカップ（W杯）フランス大会を戦う日本代表は、9月28日（日本時間29日）にサモア代表に28-22と競り勝ちプールDで2勝1敗の勝ち点9とした。7月には2点差で惜敗した相手に、開幕後ようやく精度が上がってきたアタックで、素早くボールを動かしてリベンジに成功。負ければ決勝トーナメント進出から大きく後退する危機を乗り越えた。10月8日にナントで行われる同勝ち点で並ぶアルゼンチン代表との最終戦は、勝者が決勝トーナメント進出、負けるとプール戦敗退となる天王山。サモア戦、そして9月30日にチリを59-5と圧倒したアルゼンチンの戦いぶりから、日本代表の勝利の可能性、そして課題を検証する。（取材・文＝吉田 宏）

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　4年前に巻き起こった桜の旋風が吹き始めた。4トライ以上で得られるボーナスポイントこそ逃したが、トライ狙いよりもスコアチャンスに着実にPGを重ねて、相手に1度もリードを許すことなく、パワフルなサモアを凌いだ80分。ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ（HC）も、日本らしいスピード感のある攻撃がようやくワンステージ高まった感触を掴んだ。

「W杯での大きな勝利になったと思う。タフなゲームで、フィジカルの部分で難しいところもあったが、サモア相手に非常にいいアタックもできて勝てた。次の試合は、ティア1（世界最上位国）とのタフな大一番ですが楽しみにしたい」

　急加速はできなくても、着実な前進。そんな戦いぶりを、W杯の開幕から桜の戦士たちは見せてきた。チリ戦は初出場の相手に地力の差を見せつけたが、イングランド戦では敗戦の中で接点での粘り強い防御を見せ、スクラムでも安定感を高めた。そしてパワーで挑んできたサモアには、ポイントからの速い球出しでボールを大きく展開して、相手防御を振り切った。

　開始13分のFLピーター・ラブスカフニ（クボタスピアーズ船橋・東京ベイ）の先制トライは、テンポのある左展開から、今大会初めて先発で起用されたFBレメキ・ロマノラヴァ（NECグリーンロケッツ東葛）が、防御突破からリターンパスを放って奪った。32分の2本目のトライも、レメキの突破から展開して、大外に待ち構えたFLリーチ・マイケル（東芝ブレイブルーパス東京）が仕留めた。後半に3本目のトライをモールからマークした主将のNO8姫野和樹（トヨタヴェルブリッツ）は、「FWの身分（の自分）としては、すごく嬉しい」と語ったが、上記の通り最初の2本はここまで湿りがちだった展開力とスピードで相手防御を突破して奪ったもの。世界の舞台で、ようやく日本らしさが輝き始めた。