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ラグビー日本、敗れた前戦から“ほぼ同じ布陣”の思惑 中10日のサモア戦へ「完成度を進化」

日本代表のいまを物語るFL下川甲嗣の言葉

 初戦で初出場のチリに42-12と快勝したのは、実力的には当たり前の結果だろう。2戦目のイングランドには12-34と屈したが、敗戦の中でスクラム、防御などで世界6位のイングランド相手に互角に渡り合うなど、完成度の進化は見せた。通常1週間単位で試合を組むW杯で、中10日という豊富な準備時間をかけて迎えるサモア戦では、イングランド戦以上に完成度を進化させて勝負するシナリオだ。そのために、メンバーを大きく変えず、主力と位置付けられる布陣で固めてチームの完成度を高めようという思いがメンバー表に滲む。26日の会見に参加したFL下川甲嗣の言葉が、日本代表のいまを物語る。

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「国内での5連戦からW杯の試合も含めてタフなゲームをしていて、経験は積み上がっている。どちらに転ぶかわからない拮抗した時間帯に、自分たちのやりたいラグビーができるように、細かい部分にこだわって練習してきました」

 昨年代表デビューしてキャップはわずか4だが、W杯ではチリ戦で先発、イングランド戦は途中出場と首脳陣の信頼を掴んだ24歳は、この苦闘続きの2か月の中で、チームが着実に自分たちの「らしさ」を取り戻しつつある感触を掴んでいる。その「らしさ」こそが、組織で個々の力に立ち向かうジャパン流のラグビーだ。

 NO8姫野和樹主将もサモア戦を「重要なゲームになる。1次リーグ(プール戦)が厳しい戦いになることは分かっていたが、チームとしての自信を感じています。(強豪の)イングランド戦を終えて、緊張がほぐれた部分もあるかも知れない」と、厳しい戦いになることを理解しながらも、チームとしての前戦以上の進化を感じ取る。

 サモアは22日のアルゼンチン戦でも簡単なミスや不用意な反則を犯している。25日の記事でも書いたように、サモアを率いるセイララ・マプスワHCもミスの多さが課題だと認めている。迎え撃つ日本が、イングランド戦で見せたスクラム、防御の成長に加えて、日本伝統の攻撃面で完成度を高めることができれば、サモアのミスに乗じてカウンターからスコアを奪う可能性が見えてくる。逆に、ノートライに終わったイングランド戦や7、8月の代表戦のように、攻撃チャンスを自らのミスで手放すようなゲームをすれば結果も自ずと見えてくる。

 日本代表が確実に組織としての完成度を、段階的にだが高めているのは間違いない。だが、期待感が高まる中で、チームが決死の思いで戦い続けているのも事実だろう。多くの練習を非公開で続ける日本代表だが、26日の15分のみの公開練習では、サモア戦も先発予定のPR具智元(神戸S)が左足を引きずるように走る姿が見られた。10日のチリ戦で危険なタックルを受けた箇所で、イングランド戦も先発したが、この日の姿を見れば万全ではないという印象を受けた。

 おそらく具以外のメンバーも痛みや不具合を抱えながら戦い続けているはずだ。この先の試合を考えれば無理をしないことも重要だが、メンバーの誰もが、次のサモア戦を乗り越えなければ“先”がないことも自覚しているだろう。先の事よりも目の前の試合に全力を賭けて戦うのが、いまの日本代表の本当の姿だ。総力戦で臨むサモアとの生き残りをかけた勝負で、どこまでジャパンラグビーを実現できるのか。勝者が、ベスト8を大きく引き寄せる決戦が近づいている。

(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)


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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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