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ラグビー日本、次戦サモアが不気味な理由 スクラムで互角のイングランド戦に見る勝利へのヒント

攻撃面の物足りない数値、イングランドの6割程度しか持てず

 タッチライン際から仲間の防御を見ていたWTB松島幸太朗(東京サントリーサンゴリス)は、「しつこくディフェンスもいけていたし、みんな体を張って隙を与えないというところは良かったと思う」と振り返ったが、スタッツでもタックル回数はFLピーター・ラブスカフニ(クボタスピアーズ船橋・東京ベイ)が19回、成功率100%という驚異的な数値を叩き出し、FLリーチ・マイケル(東芝ブレイブルーパス東京)の17回、LOジャック・コーネルセン(埼玉パナソニックワイルドナイツ)、NO8姫野和樹(トヨタヴェルブリッツ)の16回が4位までを独占している。

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 タックル成功率でもイングランドの78%に対して、日本は82%。しかもタックル回数が相手の83に対して174という倍以上の中での数値という事実も、防御面の奮闘を裏付ける。元イングランド代表コーチで、防御担当のジョン・ミッチェルACは、敗戦にも「今までの中でもベストなディフェンスだったと自分は思っている」と評価した。

 ノートライだった日本に対して、イングランドにはしっかりとボーナスポイント付きの4トライを奪われたが、主導権争いが続いていた前半24分のイングランドの初トライは日本のラインアウトミス、後半16分の2本目のトライは相手選手の頭に当たったボールを繋がれて許した。パワーや戦術的に相手に防御を崩されて奪われたものではない。終盤の後半26分、インジュアリータイム41分の失点はいただけなかったが、日本代表が最後までトライを取ろうと攻めて逆襲されたことと、すでに「勝負あり」という段階での集中力を欠いた状況での失点だった。

 チームは、試合が80分を終えた時点での結果で評価されるべきだが、日本の戦いぶりを見ると、キックオフから60分近くまでは互角に近い展開を見せた。そこには、先に挙げたスクラムやブレークダウンという、ゲームの主導権を左右するようなプレーで互角に戦えたことも影響している。奇をてらった奇襲ではなく、正攻法で均衡した“四つ相撲”を取れたことは収穫と考えたい。強力FWと、接点の強さ、重さは世界トップクラスというイングランド相手に、日本のFW陣の進化、成長を証明した敗戦だった。

 その一方で、日本の強みでもあるアタック面では、まだ精度アップが必要な印象だ。スクラム、ラインアウトというセットプレーの回数は大差がない中で、アタックのデータは顕著な差を示す。

 ボールを持って走った距離を示すランメーターはイングランドの533メートルに対して日本は324メートル。パス回数も167対96と、6割程度の機会しか持てていない。ここは、7月の代表戦から引き続き、攻撃を重ねる中で相手防御を意図的に崩してトライチャンスを創り出す戦術と技術の精度の不十分さが続いている。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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