“剛”のフランスと“柔”のNZが好勝負 ラグビーW杯歴代屈指「美しき開幕戦」に見た優勝候補の強さ
ラグビーワールドカップ(W杯)フランス大会の、51日間に及ぶ熱戦の火蓋が切られた。ラグビーファンの楽しみ、期待は様々だろうが、間違いなく序盤戦の注目カードと見られていたのが、9月8日に行われたフランスVSニュージーランドの開幕戦だ。ホスト国が27-13と逆転勝ちして、国民の期待に応えた。悲願の初優勝を母国で果たそうというフランスの強さを印象付けたゲームだったが、敗れたオールブラックスにも昨季の低迷から、ようやく覇権に手を伸ばせる位置まで復調する可能性を示した。歴代W杯でも屈指の好カードとなった開幕戦から、ゲームデータも読み解きながら、2つの優勝候補の強さとW杯での可能性を考える。(取材・文=吉田 宏)
W杯フランス2023コラム、7大会連続取材「ラグビーライターの視点」
ラグビーワールドカップ(W杯)フランス大会の、51日間に及ぶ熱戦の火蓋が切られた。ラグビーファンの楽しみ、期待は様々だろうが、間違いなく序盤戦の注目カードと見られていたのが、9月8日に行われたフランスVSニュージーランドの開幕戦だ。ホスト国が27-13と逆転勝ちして、国民の期待に応えた。悲願の初優勝を母国で果たそうというフランスの強さを印象付けたゲームだったが、敗れたオールブラックスにも昨季の低迷から、ようやく覇権に手を伸ばせる位置まで復調する可能性を示した。歴代W杯でも屈指の好カードとなった開幕戦から、ゲームデータも読み解きながら、2つの優勝候補の強さとW杯での可能性を考える。(取材・文=吉田 宏)
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10日に行われる初戦のチリ戦に向けて、トゥールーズで準備を進める日本代表の取材を断念してでも見るべき試合。そんな期待は裏切られなかった。パリ近郊サンドニにそそり立つ8万人を収容するスタッド・ド・フランスでのオープニングマッチ。歴代開幕戦の中でも、両チームがともに優勝候補という華々しい幕開けに相応しい80分だった。
最近の開幕戦を振り返れば、今回のカードの価値は歴然だ。2011年はニュージーランドVSトンガ、15年がイングランドVSフィジー、そして19年は日本VSロシアと、ホストチームの対戦相手は必ずしも優勝候補クラスの実力ではない。適度に実力はあるものの、ホストチームが拙い試合運びをしなければ普通に勝てる相手が選ばれてきた。
だが、今回のカードは主催者のフランス組織委員会が勝負を賭けたカーディングだ。世界ランキング3位のホスト国と、同4位でW杯優勝3度を誇るオールブラックスという、今大会のプール戦の中でも屈指の好カードをぶつけてきた。注目度は間違いなく保証されるが、ホストチームが黒星スタートという、大会の機運を大きく下げてしまうリスクもあったが、ホストチームが見事な逆転劇で7万8690人の観衆の期待に応えた。
元フランス代表主将で、常にチームのスポークスマンを務めるラファエル・イバネスGMが、プレッシャーのかかる開幕戦で勝利を掴んだ選手を称えた。
「W杯、特に開幕戦で、チームスピリットは大事です。美しく、素晴らしいオールブラックスを相手に、今日それが証明されました」
個人的には、苦戦しながら国民の前で地力を見せたフランスだけではなく、敗れたオールブラックスにとっても、収穫のあった敗戦だと受けとめた。昨季の低迷から1歩、従来の強さを取り戻した戦いぶりだった。