選手紹介だけで大ブーイング ラグビー界随一のヒールキャラ、メダルを胸に浮かべた表情の意味
熱戦が繰り広げられたラグビーワールドカップ(W杯)フランス大会。「THE ANSWER」は開幕戦から決勝戦まで現地取材したカメラマン・イワモトアキト氏のフォトコラムを随時掲載する。今回は27日(日本時間28日)に行われた3位決定戦でアルゼンチンを破ったイングランドの主将オーウェン・ファレル。
ラグビーW杯フランス大会 カメラマン・イワモトアキト氏のフォトコラム
熱戦が繰り広げられたラグビーワールドカップ(W杯)フランス大会。「THE ANSWER」は開幕戦から決勝戦まで現地取材したカメラマン・イワモトアキト氏のフォトコラムを随時掲載する。今回は27日(日本時間28日)に行われた3位決定戦でアルゼンチンを破ったイングランドの主将オーウェン・ファレル。
◇ ◇ ◇
思い描いた色のメダルではなかった。ただ、その胸に輝くメダルは、全力を尽くした上で手に入れた戦いの証だ。
ラグビーW杯3位決定戦、イングランドが26-23でアルゼンチンに勝利した。表彰式を終えたイングランドのキャプテン、オーウェン・ファレルは、壇上から降りると見たこともないような笑顔でチームメイトを迎えた。
試合前の選手紹介、ファレルがアナウンスされると大ブーイングがスタジアムに響く。相手チームのみならず時にはイングランドファンからも厳しい声が飛ぶ。ラグビー界きっての“ヒール”キャラだ。
嫌らしいほどの裏を突くプレーは、天才的なアタックセンスの現れ。喧嘩上等の強気な性格は、チーム愛の強さの印。時にその我の強さから反感を買うことも多い。
ただ、3位決定戦の後のファレルの表情、そして彼を囲むチームメートの姿を見ると、イングランドにとって「オーウェン・ファレル」という選手がどれほど大きな存在であるかが伝わってきた。
ラグビーの母国、イングランドの主将として背負う大きな期待とプライド。ベストを尽くした上でのブロンズメダルだ。これがイングランドの現在地。頂上にはあと一歩届かなかっただけ。
「やりきった。笑顔で帰ろう」――。ファレルが、仲間に向かってそう言っているような気がした。
■イワモト アキト / Akito Iwamoto
フォトグラファー、ライター。名古屋市生まれ。明治大を経て2008年に中日新聞入社。記者として街ネタや事件事故、行政など幅広く取材。11年から同社写真部へ異動。18年サッカーW杯ロシア大会、19年ラグビーW杯日本大会を撮影。21年にフリーランスとなり、現在はラグビー日本代表の試合撮影のほか、JAPAN RUGBY LEAGUE ONEオフィシャルフォトグラファーを務める。
(イワモト アキト / Akito Iwamoto)