「世界陸上の素敵な瞬間」 感動を呼んだ女子選手同士の壮絶な戦い、撮影者が解説「とても美的」
ブダペスト世界陸上は19日から連日熱戦が繰り広げられている。「ドナウの真珠」と呼ばれる美しい街並みを誇るブダペスト。現地で取材する「THE ANSWER」では、選手や競技の魅力を伝えるほか、新たな価値観を探る連載「陸上界の真珠たち」を届けていく。第18回は、64歳の世界的スポーツ写真家ボブ・マーティン氏が撮影したこだわりの1枚を本人の言葉を基に紹介する。40年以上のキャリアで夏冬19度の五輪を経験し、国際オリンピック委員会(IOC)の公式フォトグラファーも務める同氏。今回は、20日(日本時間21日)の女子七種競技から。最終種目の800メートルを走り終えた優勝選手と銀メダル選手が健闘を称え合い、海外から称賛されていた瞬間を捉えた1枚とは。
ブダペスト世界陸上連載「陸上界の真珠たち」第18回
ブダペスト世界陸上は19日から連日熱戦が繰り広げられている。「ドナウの真珠」と呼ばれる美しい街並みを誇るブダペスト。現地で取材する「THE ANSWER」では、選手や競技の魅力を伝えるほか、新たな価値観を探る連載「陸上界の真珠たち」を届けていく。
第18回は、64歳の世界的スポーツ写真家ボブ・マーティン氏が撮影したこだわりの1枚を本人の言葉を基に紹介する。40年以上のキャリアで夏冬19度の五輪を経験し、国際オリンピック委員会(IOC)の公式フォトグラファーも務める同氏。今回は、20日(日本時間21日)の女子七種競技から。最終種目の800メートルを走り終えた優勝選手と銀メダル選手が健闘を称え合い、海外から称賛されていた瞬間を捉えた1枚とは。(取材・文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平、鉾久 真大)
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ライバルがどれだけ過酷な道のりを歩んできたのか。それを推し量ることができるから取れる行動だろう。
七種競技の最終種目、800メートル2組。アナ・ホール(米国)は2分4秒09の1着でゴールし、1053点を獲得した。優勝を争ったカタリーナ・ジョンソン・トンプソン(英国)は2分5秒63で2着に入り、1030点を獲得。トータルでは20点差でトンプソンが2大会ぶりの金メダルに輝いた。死力を出し尽くした各選手が倒れ込んだトラック上。敗者が横たわる勝者のもとへ歩み寄った。
膝をついて抱き合うようにして健闘を称え合った2人。汗だくで息を切らしながらも、ともに笑っていた。7種目を戦い抜いたライバル同士に満ちていたリスペクト。フィールドレベルの高さから撮影したマーティン氏は、この1枚について解説した。
「これは本当に好きな1枚だ。彼女たちの関係性が素晴らしく親密だし、周りにいる全員も屈んでいる。とても美的な、陸上の素敵な瞬間だ」
「クイーン・オブ・アスリート」を決める2日間の戦いは壮絶なフィナーレ。米メディアが同様のシーンの画像をX(旧ツイッター)に公開すると、海外ファンからは「最後まで凄い大会だったよ!」「2人の女王がここにいる」と感動の声が寄せられるなど、観る者の胸を打つドラマだった。
英国人のマーティン氏はIOC、ウィンブルドン、マスターズの公式フォトグラファーを務め、2005年に世界最大のフォトコンテスト「ワールド・プレス・フォト」でスポーツ賞を受賞するなど、輝かしいキャリアを積み上げてきた。撮影だけでなく、各世界大会のコンサルタント責任者も担当。技術と経験をもとに撮影位置、設備の助言を送り、写真でスポーツの熱狂を世界に届けてきた。
スポーツ写真撮影の極意の一つとして「位置取りの大切さ」を挙げる。「背景が完璧でなくてはならないからね」と常に考えながら動いてきた結果が、今回の1枚にも表れていた。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)(THE ANSWER編集部・鉾久 真大 / Masahiro Muku)