世界陸上で戦う伝説64歳フォトグラファー 完璧な1枚へ、その極意は「スポーツへの興味なくす」
被写体の角度だけじゃない、位置取りの重要性「背景が完璧でなくては…」
なぜか。被写体の角度はもちろん、その背後が1枚の良し悪しを左右するからだ。
「共通しているのは、背景が完璧でなくてはならないということ。背景のことはいつも考えている。背景が良くないところに位置取りしてしまったら、良い(goodな)写真は撮れるかもしれないが、素晴らしい(greatな)写真を撮ることはできない。背景が良くないから。フォトグラフィーの基本ルールさ」
マーティン氏は写真を撮るだけでなく、各世界大会のコンサルタント責任者も担当。技術と経験をもとに撮影位置、設備の助言を送り、写真でスポーツの熱狂を世界に届けられるよう力を尽くす。
3つ目はスポーツファンには難しい意識の持ち方。目の前で尊敬するアスリートたちが歴史的偉業を成し遂げようとしていても、大歓声を肌身で感じても、「無」にならなければならないという。
「写真を撮ること以外は何も考えていない。スポーツから興味をなくすようにしている。スポーツ(の勝ち負け)に大騒ぎすることはない。私が気にしているのは、写真を正真正銘、完璧なものにすることだけ。背景のこと、照明のこと、アスリートがこれからする動きのことなどを考えている。私は完全に写真に集中しているんだ。スポーツのことは全然考えていないね」
64歳の伝説的フォトグラファーは老獪ながら、熱い魂を垣間見せた。SNS上でも称賛されているマーティン氏の写真。「Witness the Wonder(驚異を目撃しろ)」。大会会場のいたるところに描かれたキャッチフレーズ。言葉を体現する技と情熱を秘めた人だった。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)(THE ANSWER編集部・鉾久 真大 / Masahiro Muku)