世界陸上で戦う伝説64歳フォトグラファー 完璧な1枚へ、その極意は「スポーツへの興味なくす」
ブダペスト世界陸上は19日から連日熱戦が繰り広げられている。「ドナウの真珠」と呼ばれる美しい街並みを誇るブダペスト。現地で取材する「THE ANSWER」では、選手や競技の魅力を伝えるほか、新たな価値観を探る連載「陸上界の真珠たち」を届けていく。
ブダペスト世界陸上連載「陸上界の真珠たち」第13回
ブダペスト世界陸上は19日から連日熱戦が繰り広げられている。「ドナウの真珠」と呼ばれる美しい街並みを誇るブダペスト。現地で取材する「THE ANSWER」では、選手や競技の魅力を伝えるほか、新たな価値観を探る連載「陸上界の真珠たち」を届けていく。
第13回は、64歳の世界的スポーツ写真家ボブ・マーティン氏が登場する。40年以上のキャリアで夏冬19度の五輪を経験。国際オリンピック委員会(IOC)の公式フォトグラファーや設備、撮影エリアのコンサルタントを務めるなど世界的に認められる人物だ。第12回に続く後編は「スポーツ写真を撮影する上での3つの極意」。世界陸上の現場から届ける数々の写真には、プロフェッショナルな技術が詰まっていた。(取材・文=THE ANSWER編集部・浜田 洋平、鉾久 真大)
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現場で過ぎ去った時間は巻き戻せない。全神経を研ぎ澄まし、アスリートの一瞬を1枚に収める。その裏に3つの極意があった。
「素晴らしい機材が必要だ」。英国人のマーティン氏は断言する。ソニーのカメラ、レンズを使い、「今だ」と思った瞬間を収めてくれる性能が重要。しかし、機材そのものは極意に含まれない。
「私にとってより大事なのは、機材のおかげで写真に集中できるということだ。私はスポーツの知識があるし、アスリートが何を、いつするかわかっている。選手の特性を知っているんだ。だから、特別な瞬間を収められる。機材が自由に撮る助けになってくれるということ。機材は重要。でも、機材は私をフォトグラファーにさせてくれるだけで、テクニシャンにするわけじゃない」
選手の動きを予見し、抜群のタイミングでシャッターを切るのが極意の一つ。各競技、選手のことを知らなければできない。この瞬間に懸けるため、機材が助けになるという。
IOC、ウィンブルドン、マスターズの公式フォトグラファーを務め、今では「他人が撮らないものを撮る」と意識するマーティン氏。2005年に世界最大のフォトコンテスト「ワールド・プレス・フォト」でスポーツ賞を受賞するなど、輝かしいキャリアを積み上げてきた。
人の心を動かすために必要なのもの、2つ目は「正しい位置取り」。選手が戦う傍らで、世界中のフォトグラファーが激しい火花を散らしている。「ここ(世界陸上)には300人ほどのフォトグラファーがいるよね。私が撮りたい写真を撮るためには、その中でも適切なポジションにいる必要がある。適切な場所に、適切な時にいなくてはいけない」