村田諒太の「リアル」な生き方 亡き友に“捧がない”初防衛「安らかに。それだけ」
コアなファンの期待に「応えたいけど、怖いという気持ちも」
リアルに生き、リアルを目指そうとしている。試合後、リング上で9500人のファン、そしてテレビカメラの向こうにいる視聴者に伝えた。「皆さん、(井上)尚弥の試合を見て思ったと思うけど、リアルと戦ってほしいと思うんですよ。なので、会長! リアルな試合お願いします!」。所属する帝拳ジムの本田明彦会長に頭を下げた。狙うはカネロこと4階級制覇王者サウル・アルバレス(メキシコ)やIBF王者ゲンナジー・ゴロフキン(カザフスタン)だ。
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「今の日本でボクシングってわかりにくいでしょ。WBSSが盛り上がったのは、一つチャンピオン同士が試合をしたぶつかり合いがあったから。カジュアルファンに向けてならWBAの世界戦でOKだけど、尚ちゃん(井上尚弥)がね、ああやって統一していったので、ヘビーファンはそこを求める。そういうファンの気持ちに応えていきたいっていう気持ちは心のどこかにある」
4団体に王者が君臨する現代ボクシング。村田もその一人だが、同じ階級なのに「世界王者」を名乗る選手が何人もいる状況だ。誰が一番強いのか。化け物揃いのミドル級。コアなファンは、村田による世界の猛者たちへの“挑戦”を期待する。本人も痛いほど自覚しているが、トップ中のトップとの試合が目前に迫った現状で本音を隠さない。
「でも、心のどこかに怖いという気持ちもあるんですよ。だからデカいことを言いたくない。両方の気持ちがありますよ。プロとしてわかりやすい試合をしないといけない。チャンピオンって言ったって何人いるんだよってなる。マッチメイクって簡単なことじゃないし、ミドル級って動いているお金がとんでもないので、現実を見ないといけないし」
岩のように重い拳を顔面に打ち付けられるリング上。“死ぬ気で”ではなく、リアルに死と隣り合わせの危険な競技。ほとんどのボクサーが意識するまいと恐怖心に蓋をする中、村田は「怖い」と口に出した。
期待に応えるため、もらった恩恵を返すために拳を振る。「いちボクサーとして、いち日本人として、日本にどれだけ貢献できるかが個人として大事」。真の世界王者へのリアルな挑戦。リアルファンの期待を背負う戦いは続く。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)