村田諒太の「リアル」な生き方 亡き友に“捧がない”初防衛「安らかに。それだけ」
ボクシングのトリプル世界戦が23日、神奈川・横浜アリーナで行われ、WBA世界ミドル級王者・村田諒太(帝拳)は同級8位スティーブン・バトラー(カナダ)に5回2分45秒TKO勝ち。亡き友に“捧ぐことのない”初防衛を果たした。リアルを地で行く男は、弱さをさらけ出す人間臭さを漂わせながら真の頂きを目指す。
10月に練習相手が試合後に死去、村田諒太の胸中「僕には何もできない」
ボクシングのトリプル世界戦が23日、神奈川・横浜アリーナで行われ、WBA世界ミドル級王者・村田諒太(帝拳)は同級8位スティーブン・バトラー(カナダ)に5回2分45秒TKO勝ち。亡き友に“捧ぐことのない”初防衛を果たした。リアルを地で行く男は、弱さをさらけ出す人間臭さを漂わせながら真の頂きを目指す。
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10月12日。元世界ランカーのパトリック・デイ(米国)は、米シカゴでスーパーウエルター級のリングに上がった。しかし、KOされた際に後頭部をマットに強打。意識を失って病院に緊急搬送された。頭部に重傷を負って昏睡状態。脳内出血を起こして手術を受けたが、意識は戻らなかった。試合から4日後、命を落とした。まだ27歳だった。
訃報から1か月後、帝拳ジムで村田の練習が公開された。2017年春から村田の試合のたびに来日し、スパーリングパートナーを務めてくれた戦友の死。亡き友に捧ぐ勝利を――。そんな見出しをイメージしたのか、ある記者がデイの話題を振った。しかし、安易な思惑は村田の返答にかき消された。
「彼のために戦うといっても、それはまた違う話だと思います。僕には何もできないので。僕は亡くなったことを悲しむのではなくて、旅立ちが安らかであることを祈るのが大事なことだと思う。それだけですよね。そこにかこつけて何かを言うのは性に合わないというか、彼の旅立ちが安らかであることが大事」
いつも記者の質問を真正面に受け止め、本音で応じる。リングで見せるような鉄壁のガードはない。時には毒舌を吐き、記事にはできない言葉が飛び出すのもよくあること。そのたびに笑いの輪ができる。虚勢を張ることもない。7月にロブ・ブラント(米国)から王座奪還した直後は「不安はなかったか?」の問いに胸の内をさらけ出した。
「不安がないわけないでしょ。不安がなかったらルーティンなんてやらないし、こんな哲学的なこと考えないし。不安はあっていいと思う。不安があるから頑張るし、不安があるから成長していると思うし、不安があるから見ていただいて共感していただけると思う。自分はヘタレやしそれでいいと思う」