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なぜ日本は世界を驚愕させられたのか 「240日」という時間が作った完成度

ワールドカップ日本大会で、4年前の“奇跡”と呼ばれた躍進を軽々と乗り越えたジェイミー・ジャパン。日本中を熱気に包んだ祭典を終えて、日本代表がなぜ世界を再び驚愕させることができたのかを、あらためて振り返る。

史上初の8強入りを果たした日本代表【写真:Getty images】
史上初の8強入りを果たした日本代表【写真:Getty images】

史上初の8強入りを果たした日本、快進撃の要因を振り返る

 ワールドカップ日本大会で、4年前の“奇跡”と呼ばれた躍進を軽々と乗り越えたジェイミー・ジャパン。日本中を熱気に包んだ祭典を終えて、日本代表がなぜ世界を再び驚愕させることができたのかを、あらためて振り返る。

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 日本代表の躍進について語るとき、ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)、トニー・ブラウン・アシスタントコーチ(AC)の存在を抜きに語ることはできない。過去に優勝経験のなかったハイランダーズをスーパーラグビー優勝に導いた実績、日本代表でも世界最先端の技術や戦術を導入し、選手には厳しいトレーニングを科してきた。

 その一方で、多くの世界トップクラスの指導者の中でジェイミー&トニーのコンビは、日本協会と契約を結ぶまではワールドカップはもとより、テストマッチの指導経験すらなかった。だが、このコンビの賢明さは、日本代表が他国を上回れるものは何かを、明確に捉えていたことだろう。

 それは「時間」に他ならない。

 ジョセフHC就任から半年あまりの2017年5月に、日本大会での対戦相手が確定した。ベスト8入りのためには、最低でもアイルランド、スコットランドのいずれかに勝つことが必要だった。しかし、サイズやパワー、そして技術、経験値と、日本が対戦相手を上回ることが容易ではないのは明らかだった。その一方で、世界中のあらゆる代表チームが頭を悩ませてきたのが代表強化にかけられる「時間」だ。

 多くの代表チームが強化に使えた時間は1、2か月程度。今回の日本大会へ向けては、7月のテストマッチ期間プラス、8月の再集合から開幕までの期間で、チームの最終仕上げを行っている。ニュージーランド協会やイングランド協会のような豊富な資金を持つ協会であれば、選手を長期間拘束できると思われがちだが、トップレベルの選手であれば、所属クラブでの活動や契約もある。そのため、代表コーチ陣が満足できる強化時間を作れないのが現状だ。世界中の代表チームは、その実力の高低にかかわらず“寄せ集めチーム”という宿命を背負っているのだ。

 その寄せ集めチームを、あたかも通年活動を続けるパーマネントチームのように鍛え上げた数少ないチームが日本代表だった。2016年の就任時には「エディー(ジョーンズ前HC)の時代のように十分な強化時間を持つのは難しい」とジョセフHCが語っていたように、当初はエディー・ジャパンが2015年のワールドカップイヤーに仕えた200日を超える強化期間を作り出すのは難しかった。

 そのために、すでにスーパーラグビーに参戦していたサンウルブズを代表クラスの選手の経験値を上げるために積極的に活用。加えて、代表候補クラスの選手に高いレベルの練習と国際試合の経験を与えるためにNDS(ナショナル・ディベロップメント・スコッド)を創設するなど、3つのチームを活用しながら、強化時間を捻出してきた。そして、代表、協会サイドとチーム側の話し合いの中で、ワールドカップイヤーとなった今年は240日という強化時間を実現した。その結果、どの出場国よりも完成度の高いチームとして母国開催のキックオフを迎えることが出来たのだ。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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