菊谷崇×廣瀬俊朗・前編 「サッカーの6倍」!? 意外な注目はアルコール消費量
見どころはお酒の消費量、選手が涙を流す国歌斉唱のシーンにも注目
――初めて日本にやってくるラグビーW杯。大会自体の見どころはどうでしょうか。
菊谷「お酒の消費量ですね(笑)」
廣瀬「サッカーの6倍……」
菊谷「ラグビー観戦にお酒は欠かせない存在。こんなに飲むのかとニュースになることをひそかに期待している。サッカーの6倍というのは、ファンが飲むお酒の量が6倍。ラグビーの応援には、野球のように鳴り物がない。みんなで歌を歌うこともない。みんなが試合を観戦するスポーツ。だから試合が始まる前から飲んで、試合中も飲んでという文化がある。でもファンが暴れることもないし、フーリガン的な問題が起きることもない。ファン同士でケンカもしない。
純粋にラグビーを応援する。いがみあうよりは、一緒に目の前の試合を楽しもうと。だからお酒の消費量が増える。いいラグビー文化。素面では喋りかけられないけれど、お酒の力を借りて、他国の人と交流できるようになるかもしれない。結果ももちろんそうだけど、実際に会場に足を運んだファンが盛り上がってくれることが、成功につながると思います」
廣瀬「僕もラグビー特有の雰囲気を楽しんでほしい。試合前から一緒に国歌を歌ったりできたら面白い。みんなでいいゲームを見たい。敵でも、味方でも関係なく、ラグビーへのリスペクトがあるのはすごくいいなと」
菊谷「また日本代表だけじゃなくて、海外の強豪も魅力的なので是非注目してほしい。例えば前回大会で日本のヘッドコーチだったエディーさんが率いるイングランド。日本人が応援してあげると、エディーも喜ぶ。そういう楽しみ方もあります」
廣瀬「世界の技術を個人レベルで体感できる機会はサンウルブズがあるけど、W杯で国の重みを背負って戦うのを見るのはまた全然違う。国歌を、涙を流しながら選手たちが歌う。あの雰囲気はなかなかほかの競技にはない。それ以外でも、自分の好きな国、好きな食べ物がある国、そんなのとリンクしてもいいのかなと。カッコいいジャージとかで見るのもいいですね」
菊谷「もしかしたら地元で練習してるチームがあるかもしれない。何か親しみがあるチームを応援するのも良いのかなと。もしかしたら街で、どこかの国のでっかい人に会うかもしれない。道案内するからその国を応援するとか、きっかけはなんでもいい。ラグビーを色々な形で楽しんでほしいですね」
(後編に続く)
菊谷 崇(きくたに・たかし)
1980年2月24日、奈良県生まれ。御所工業高から大阪体育大に進み、トップリーグのトヨタ自動車ヴェルブリッツでプレー。イングランドのラグビーチーム、サラセンズでプレーした後、キヤノンイーグルスに移籍した。ポジションはNO8、フランカー。15人制と7人制ともに日本代表経験を持ち、15人制代表デビューは2005年11月5日のスペイン戦。2008年より主将を務め、2011年ワールドカップでは主将としてチームを率いた。日本代表キャップ数「68」。2018年に引退。現在は「ブリングアップラグビーアカデミー」を主宰するほか、ラグビー日本代表のU-20代表、高校代表などユース世代の代表コーチも務める。
廣瀬 俊朗(ひろせ・としあき)
1981年大阪府吹田市生まれ。5歳のときに吹田ラグビースクールでラグビーを始め、大阪府下有数の進学校、北野高校でもSOで活躍して慶大―東芝と、所属するチームですべて主将を務めた。東芝時代はWTBでも、司令塔を兼務する独自のスタイルで、チームのトップリーグ制覇に貢献。2007年に日本代表入りして、12年には、エディー・ジョーンズHCが就任後に主将に任命。2015年ワールドカップ後のオフシーズンに現役を引退。東芝のBKコーチなどを務め、今年2月に退任と同時に東芝を退社。ドラマ「ノーサイドゲーム」での演技も好評。
(THE ANSWER編集部)