オールブラックスを感嘆させた伝説の“空飛ぶWTB” 76歳・坂田好弘がW杯後に描く夢
日本代表はハンドリング技術も「世界トップクラス」と絶賛
ワールドカップ・イヤーの日本代表の戦いぶりに注目する中で、坂田氏がセットプレーの安定に加えて注視するのがハンドリングスキルだ。自身が指摘したように当時の日本代表は非力ではあったが技術には優れていた。ジェイミー・ジョセフ・ヘッドコーチ(HC)率いるチームの技術は世界トップクラスだと太鼓判を押す。
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「ワールドカップ出場国すべてを見ているわけじゃないが、いまの日本のパスワークは群を抜いて速い。フィジー戦、トンガ戦、アメリカ戦を見ても、相手がタックルするタイミングを一瞬ずらしながらボールを回していますね。そういう技術が非常に高い。止まらないパスということでは、去年ウェイン・スミス総監督が神戸製鋼でやっていたパスと共通しています。だから、いいボールがWTBにつながっている。もし、僕がいまの代表でWTBをしていたら、攻撃に関してはものすごく嬉しいですね。いまのチームだったら、プレーしてみたい」
日本代表が目指すベスト8入りにも、今季の試合を見る中で「可能性があるような気がしてきた」と期待を高めている坂田氏だが、そのための条件もあると指摘する。
「もし、セットプレーで崩されると計算が狂ってくるはずです。アイルランド、スコットランドは、絶対に重圧をかけてきます。でも、日本にとってもいまや生命線の部分ですから、当然のことながら準備、対策はしているはずです。そこに期待したい」
ワールドカップ開幕が近づき、日本国内での機運も高まっている。だが、坂田氏の現役時代にはラグビーで世界一を争う大会など想像すらできなかった。当時のラグビーは、協会同士が対戦を組み、ホームチームがビジターチームを招待するのが伝統。欧州の6か国対抗以外は、1対1の戦いがテストマッチの流儀だった。
「(ワールドカップを)第1回からずっと見に行って『やりたいね』と思うこともありました。でも、日本が本当にワールドカップで戦えるようになったと感じたのは4年前の大会でした。僕らの時代にワールドカップがあっても、自信はなかったと思います。一個人としては戦えたと思いますけど、チームとしてはどうかなという時代でした」
いまや、関西ラグビー協会会長として、日本大会でファンや関係者をホストする役目を担う立場だ。関西地区のトップとして思うのは、多くのラグビーファン、そしてファン以外の人たちもラグビーを楽み、ラグビーが培ってきた文化を感じてほしいという思いだ。
「世界の一流国が集まる大会です。こういうチャンスはないですから、テレビでも見られますけど、現場で見るチャンスがある。僕はいつも思うんですけど、ラグビーには観戦する文化というのがあります。試合をする文化はもうあるじゃないですか。観戦する文化ですね。試合前、試合中、試合後と、楽しみ方がある。
試合が終わると、スタジアムから街に繰り出して、敵味方で一緒になって酒を酌み交わし、試合のこと、ラグビーのこと、自分たちのことを語り合う。ラグビー1試合で、何倍でも楽しめる。本来のラグビーの楽しみ方というのは、勝ち負けでは終わりません。それを紹介でき、体感していただけるいい機会がワールドカップです」