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“復興の街”釜石に流れた君が代 日本を後押しした「熱」と、歴史的1勝の意味

ラグビー・ワールドカップ日本大会開幕まで55日と迫った27日、日本代表はパシフィック・ネーションズ・カップ第1戦でフィジー代表に34-21と快勝。ワールドカップ・プレシーズンのテストマッチで、これまでの通算成績が3勝14敗、世界ランキングでも11位の日本を上回る9位の強豪を8シーズンぶりに破る最高のスタートを切った。

強豪フィジーから8季ぶりの勝利を挙げた日本代表【写真:Getty Images】
強豪フィジーから8季ぶりの勝利を挙げた日本代表【写真:Getty Images】

W杯イヤー初戦、世界ランク9位の強豪フィジーに8季ぶりの勝利

 ラグビー・ワールドカップ日本大会開幕まで55日と迫った27日、日本代表はパシフィック・ネーションズ・カップ第1戦でフィジー代表に34-21と快勝。ワールドカップ・プレシーズンのテストマッチで、これまでの通算成績が3勝14敗、世界ランキングでも11位の日本を上回る9位の強豪を8シーズンぶりに破る最高のスタートを切った。

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 会場となったのは、岩手・釜石鵜住居復興スタジアム。天気予報に反して、晴れ間もみえた空に、フィジー国歌、そして君が代が吸い込まれるように流れた。

 2011年に起きた東日本大震災が、釜石市民の生活も、未来も奪い去った。いや、正確には奪い去ったかのように見えた。

 津波で甚大な被害を受けた鵜住居小学校と釜石東中学校の跡地に、このラグビー場は造られた。「復興」というネーミングに、釜石市民の強い思いが滲む。

 未曾有の苦難から完全に立ち直る希望と、願いが込められた日本ラグビーが世界に誇るべきスタジアム。この地で、ジェイミー・ジャパンが鮮やかな勝利を市民に届けた。

 キックオフ3分にSO田村優(キヤノン)が中央左40mPGを決めて先制。ワールドカップ仕様に改修されたスタンドが、初めてトライで沸き上がったのは、それから5分後のことだった。敵陣ゴール前のラインアウトからラックを作ると、BK陣の間で、まさに“光速”で情報が交換された。

 トライゲッターのWTB福岡賢樹(パナソニック)が、穏やかな表情でファーストトライを振り返った。

「アドバンテージがでていたので、思い切って勝負に出られるタイミングだった。優さんがいい所に落としてくれたんで、押さえるだけだった。あまりキックを使って(トライを)狙いにいくプランは今回は準備していなかったが、あそこは優さんとのコミュニケーションでトライを取りにいきました。裏のスペースを狙おうということは最初から話していて、その中で転がすか、上にあげるかの選択肢を優さんに示して、ああいうキックになりました。キックに対する瞬間の反応速度には自信がありました」

 田村が、フワっと浮かせたようなショートパントをフィジー防御の背後に広がるインゴールに落とすと、その楕円球に真っ先に飛び込んだのが福岡だった。

 完璧なキックと、瞬時の反応――。

 ボールを蹴らせても、短距離走でも、おそらく日本選手に勝ち目のないフィジーのアスリートを、情報と日々の練習で抜き去る、これぞ日本のトライ。勢いを大きく引き寄せた。

 フィジーに個人技での突破から1トライを許したが、直後にはFBからWTBに転じた松島幸太郎(サントリー)が、絶妙のタイミングとアングルでライン参加しての技ありのトライをマーク。23分には、今度は連続攻撃からの細かいパスまわしでフィジーの防御を完全に崩して、CTBラファエレ・ティモシー(神戸製鋼)がインゴール右に飛び込んだ。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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