旧国立に6万7000人を呼んだ男、“貴公子”本城和彦は今、テレビマンになっていた
周到な準備が日本のアドバンテージになる
早大時代も、圧倒的な戦力を誇る明大を相手に、戦術や組織力で立ち向かい、番狂わせを起こした。これこそが早大ラグビーの真骨頂だった。悲壮感の中で、弱いものが強い相手を倒すカタルシス。このストーリー展開に、若い女性ファンのみならず多くのファンが共感し、熱狂したのが23-6で早大が勝利した1982年のレコードブレーキングな一戦だった。2015年、16年に続き、組織が機能して強大な相手を打ち負かすストーリーを、往年の貴公子は2019年の日本代表にも求めている。
「日本の強みは、ある特定のゲームにフォーカスして、そこに向けて集中してコンディションを高めていくような作業。それが最高にはまったのが2015年大会の南アフリカ戦だったと思います。あの試合でジャパンが得たのは、まさに自信なんですね。それは、リオデジャネイロ五輪の7人制代表と一緒なんです。金メダル候補のニュージーランドを倒し、それ以降の試合を見ていると、『コイツら、こんなに強かったかな』と感じるくらい堂々とした戦い方をしていました。でも、この自信は、対戦相手と日程が決まってから何か月もかけてニュージーランドをターゲットにして準備してきたことが背景にある。まさに南アフリカ戦と同じことだったと思います」
2015年ワールドカップで南アフリカを倒した後もサモア、米国を倒した15人制代表と、16年リオデジャネイロ五輪でニュージーランドから金星を奪った後もケニア、フランスと強豪に勝利した7人制代表が、本城氏の中でクロスオーバーする。世界中が勝てないと考えていた強豪を倒すことで、いままで取り組んできた練習が間違っていなかったという自信が確信に転じたのが、南アフリカ戦でありニュージーランド戦だった。そこには、緻密に練られ、準備された勝つためのシナリオがあった。周到で妥協を許さない厳しい準備(練習)という土台が大前提となり、そこに様々なファクターが織り込まれるようにして起きたのが歴史的な勝利だったことは言うまでもない。2つの歴史的な勝利は決して“奇跡”ではなく、正当な報酬だったのだ。
この経験値から、本城氏がワールドカップ日本大会でも重視するのは初戦だという。