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16年前の代表監督が残した“遺言”は活かされたのか 今、抱える日本ラグビーの問題点

日本代表を強化しなければラグビー界に未来はない

 向井監督時代の日本代表も2003年ワールドカップでスコットランドと戦っている。11-32で敗れているが、一時は4点差に迫る戦いに、オーストラリアのファン、メディアからはBrave Blossoms(勇敢な桜の戦士たち)と称えられた。

「走らせるとやっかいなWTB福岡堅樹らの足を止めるために、そこをパワーで潰すことを狙ってくるでしょう」

 向井ジャパンも苦しめられた相手だが、05年大会での対戦でも、選手の後方に落とすパントなど日本が苦手なエリアを突いてきたのは記憶に新しい。

 進化を認める一方で、日本代表選手、監督OBとしてこだわりの持論もある。

「確かに進化はしているけれど、それは外国人選手が多くなって、使える人数が増えたということにすぎません。僕のワールドカップのときだって『どうしたら勝てますか』と聞かれたら、『全員外国人にしたら勝てる』と言ってきましたから。でも僕は、やはり日本人の力をしっかりと伸ばしていく強化体制が必要だと言い続けてきた。日本で生まれ育った子供たちを、日本協会も関与するアカデミー(若手育成機関)で伸ばしてあげるシステムを、しっかりと作っていかないと未来はないと思います」

 03年ワールドカップ後に代表監督を辞したが、日本協会には“遺言”を残した。

「辞めるときにも必ずアカデミーをやってくださいと言ったけど、(新しい)監督流で変えちゃって実現できなかった。アカデミーを発足させて、もし10年続いていれば、少しはシステムになっていたんじゃないかな。日本のそれぞれの地域ごとに育成機関を置いて、強化のピラミッドができていたかも知れないんです。全国各地でTLのOB監督、コーチらが、若い選手に日本代表が取り組むスタイル、メニューを教える環境は作れたと思います。でも、ラグビー協会には考えがなさすぎました」

 そう語る横顔には、情熱、怒り、落胆と、様々な感情が混じり合っていた。

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吉田 宏

サンケイスポーツ紙で1995年からラグビー担当となり、担当記者1人の時代も含めて20年以上に渡り365日欠かさずラグビー情報を掲載し続けた。1996年アトランタ五輪でのサッカー日本代表のブラジル撃破と2015年ラグビーW杯の南アフリカ戦勝利という、歴史に残る番狂わせ2試合を現場記者として取材。2019年4月から、フリーランスのラグビーライターとして取材を続けている。長い担当記者として培った人脈や情報網を生かし、向井昭吾、ジョン・カーワン、エディー・ジョーンズら歴代の日本代表指導者人事などをスクープ。ラグビーW杯は1999、2003、07、11、15、19、23年と7大会連続で取材。

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