一夜でかき消した「衰えた」の声 井上尚弥32歳、最大の強敵を沈黙させた“初心”への回帰

決して慢心をしない井上 中谷潤人との決戦まで進化を続ける
一方、王者の井上は相手の態度や言動に惑わされることはない。ましてや頂点に君臨し続ける怪物に慢心もない。井上とアフマダリエフと対戦経験がある元WBA&IBF世界同級統一王者マーロン・タパレスを招へいし、約1か月のスパーリングを行った。
“初心”に立ち返るため、プロデビュー以来初めてとなる出稽古を13年ぶりに敢行。名門・帝拳ジムへ出向くことを自ら要望した。「見られる人や環境が違うと一段と緊張感、集中力を上げてくれる」と思いを口にした。
怪我をするか。強くなるか。
リスクを背負いながらも努力を積み重ね、歩みを止めない。過酷な練習に加えて、計120ラウンドを消化した。対峙したのはWBOアジアパシフィック(AP)スーパーバンタム級王者・村田昴、WBOAPフェザー級王者・藤田健児、東洋太平洋フェザー級王者・中野幹士、日本バンタム級王者・増田陸(いずれも帝拳)。どの選手も実力を兼ね備えた世界ランカーで、大橋会長も「帝拳の選手は間違いなく強いし(井上を)喰ってやろうという気持ちで来るので最高の練習になる」と太鼓判を押していた。
井上は「選手それぞれに突出して良いところがある。そこに自分のポイントを見ながら戦っていく。今回は一つひとつクリアできた」と回想。挑んでくるようなスパーリングを受け止め、自身を磨き直した。
「井上尚弥は衰えたな」「歳には勝てないかw」。告知PVにも使われた32歳を不安視する声。名古屋での決戦はそんな言葉をかき消すような一夜になった。
今後は12月のサウジアラビアでの興行に加えて、来年5月に中谷潤人(M.T)との対戦が計画されている。アフマダリエフ戦を現地観戦した中谷に向け、井上はリング上から「あと1勝! 12月、お互い頑張って来年、東京ドームで会いましょう!」と声をかけると、中谷も笑顔で応えた。
年齢を重ねても強さを増し続ける怪物の拳。先に広がる舞台とその道のりに目が離せない。
(THE ANSWER編集部・澤田 直人 / Naoto Sawada)
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