日本ボクシング界の「宝」と呼ばれた比嘉大吾 強打復活KO勝ちの裏に「前と違って大人」の成長
野木トレーナーが精神面の成長を証言「『今日、自主練やりたい』って言う」
17年5月にWBC世界フライ級王座を獲得。2度防衛し、デビューから15戦連続KO勝ちの日本タイ記録を持つなど強打のボクサーとして名を馳せた。しかし、18年4月の防衛戦で体重超過を犯して王座剥奪。ボクサーライセンスの無期限停止などの処分を受け、一度は引退を考えた末に再起した。20年2月、119ポンド(53.98キロ)契約8回戦で再起。以降はバンタム級を主戦にし、同年12月にWBOアジアパシフィック王座を獲得した。
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だが、21年4月の初防衛戦は判定でプロ2敗目。以降は2連勝でこの日を迎えた。ボクシング界でも過酷と悲鳴が上がる野木トレーナーの階段トレーニングに参加。フィジカルを徹底的に鍛え上げてきた。これまでトレーナーから言われるがまま動いていたが、比嘉は「多少は自分で考えながらやらないといけない。今まで野木さん任せ。そこでボクシングと向き合えば、強くなれるし、世界も見えてくる」と成長してきた。
井上尚弥(大橋)が昨年12月に4団体統一し、階級変更のため今年1月に返上したバンタム級のベルト。WBAは井上の弟・拓真(大橋)、WBOは井上に敗れたジェイソン・マロニー(オーストラリア)が保持し、WBCとIBFは空位だ。比嘉のバンタム級世界ランクはWBA11位、WBO13位。今回の勝利で2階級制覇に前進した。
これまでメンタル面でも“幼さ”が残っていた比嘉。しかし、野木トレーナーは成長を明かした。
「僕が常々言っているのは、『(世界戦が)決まってから頑張っても獲れない。頑張っているからチャンスが来るんだ』ということ。そこの積み重ね。前と違って大人ですし、今回も『今日、自主練やりたい』と言っていた。前だったら『サボるに決まってるだろ』って(笑)。徐々にそういう関係に変わっている。本人が本当に死ぬ気で世界にリーチを掛けてもらいたい。世界戦用の気持ちがついてくれば」
願いを聞いたの比嘉は「世界はまだ甘くない。これからもっと練習していきたい」と気を引き締め、「一時は倒せなくてもいいやみたいな感じもあった。でも、求められているのは倒すこと」と受け止めた。希代のKOファイターが復活ロードを突き進む。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)