6連勝でB1制覇、“4位”宇都宮がCSで変貌した理由 MVP比江島慎を覚醒させた4月の1敗
勝負どころでの強気なアタック、決勝でも第4クォーターに2桁得点
比江島は5月1日の千葉戦で19点を挙げ、チームを72-69の勝利に導いた。彼は能力に対してアタックマインドが控え目で、「行けるのに行かない」傾向のあった選手だ。しかし2022年5月の比江島は技と体に“心”が伴い、覚醒し、チームを背負う大活躍を見せた。
バスケットボールは確率のスポーツで、得点の期待値の高い選手ならばセルフィッシュにアタックすることがそのまま“チームプレー”になる。
琉球とのCS決勝も、28日の第1戦は54-56の2点ビハインドで迎えた第4クォーターに11得点。29日の第2戦は55-54の1点リードで迎えた第4クォーターに14得点。試合の行く末が分からない、一番得点の欲しい状況で彼はきっちり決め切った。
栃木にはポイントガードの鵤誠司、テーブス海といった優れたプレーメーカーがいる。そんななかでも比江島は勝負どころのハンドラーを任され、チームの舵取りを委ねられていた。インサイドとの連係で崩すピック&ロールを多用し、自らゴール下に切れ込み、高確率で得点に結びつけていた。
琉球も勝負どころで比江島が仕掛けてくることを予想していたはずだ。ただ「ファウル以外では止められない」ところが彼の凄みだ。さらに外からのシュートやギリギリの間合いでパスを通す上手さもあり、ドライブだけを防げばいいわけではない。
この競技のオフェンスはミスマッチを突くことが鉄則で、確かに比江島は外国出身のインサイドプレーヤーに対して動作の速さと切れでアドバンテージを取れる。とはいえ大きくて高い選手がゴール下に待ち構えていれば、物理的にスペースがない。しかし比江島はダブルクラッチのような大技も駆使して、悪い体勢からでもタフショットを沈め、フリースローを獲得していた。手のつけられない活躍だった。
「比江島が比江島らしくプレーした」ことが、宇都宮が東地区4位から5シーズンぶり2度目のB1を制した最大の要因だ。シーズンの山場で彼が見せたプレーは、それくらい驚異的だった。
(大島 和人 / Kazuto Oshima)