寺地拳四朗、ボクサーの“ご法度”を破った約束 「負けは恥じゃない」で覚悟を決めた
加藤トレーナー「隠れてしまう拳四朗がいた」、試合前に交わしたある約束とは
取材を拒否したわけではないが、コンビを組む加藤健太トレーナーは心にモヤモヤを抱えていた。「逃げたわけじゃないけど、隠れてしまう拳四朗がいた」。試合1か月前、寺地に一つの約束を提案。「負けても会見するような戦いにしよう」。この日は勝って会見。同トレーナーは寺地の肩に手を置き、少し声を震わせながら明かした。
「前回は報道陣の方々に申し訳ない気持ちがあった。試合1か月前に負けても会見しようと決めました。負けることは恥ずかしいことじゃない。そこの部分で人間的にも成長してほしかった。だから、今回は勝ったから会見をするわけじゃないですよ(笑)」
負けた後のことを考えてリングに上がるボクサーなんていない。負けたら……と想定させるのはご法度だ。それでも、加藤トレーナーは提案した。「どういう反応するか不安で、本人に言うべきかどうか迷いました。でも、しっかり本人も理解して捉えてくれた。これは大丈夫だなと」。寺地はこの言葉で覚悟が決まったという。
「これが大きかったですね。負けは恥じゃない。加藤さんがそう言ってくれた。練習もちゃんとやってきたし、やってきたことは間違いじゃない。負けたらもうしょうがない。やってきたことを全力で出せば、負けても恥ずかしいことじゃない。だいぶ気持ちが楽になりました。気持ちが変わります。今までは『絶対、勝たな!』って思っていた。考え方って大事ですね」
長き防衛ロードのプレッシャーから解放され、人としても一回り成長してリングに帰ってきた。「加藤さんを信じてやってきた甲斐あります」。世界王者・寺地拳四朗として、第2章のゴングが鳴った。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)