なぜ、ザギトワは女王メドベに勝てたのか 「1.31点差」を生んだ“勝負のセオリー”
世界最高得点をたたき出したSP、しっかりと実践した“勝負のセオリー”
戦前の予想通りにSPで首位発進したザギトワは、最終グループの22番目に滑ったフリーでもほぼパーフェクトな演技を見せ、フリー156.65点、自己ベストを1.33点更新する世界歴代2位の合計239.57点を出し、首位をキープ。そして、24番目の大トリで滑ったメドベージェワの演技結果を待った。最終滑走者である姉貴分の合計得点が238.26点と出て、逃げ切っての五輪初の金メダル獲得が決まった瞬間、普段からあまり感情を表に出さないザギトワは大喜びすることもなく、静かに勝利を噛みしめながら下を向き、うれし涙を拭った姿が印象的だった。
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なぜ、ザギトワは世界女王をわずか1.31点差で抑えて勝つことができたのか。まずは、他を圧倒する演技構成のプログラムだったSPとフリーでノーミス演技をしたことで、ジャッジから高い出来栄え(GOE)加点をもらえた。特に、SPで歴代世界最高得点をたたき出して首位発進したことは大きい。この勝負のセオリーをしっかりと実践できたことが最たる勝因として挙げてもいいだろう。フリーの得点がメドベージェワと同じとなり、SPでの1.31点差を生かして逃げ切れたからだ。また前述したように、若さを前面に押し出した「最強プログラム」を完璧に演じ切り、ジャンプ構成の中で、最も難しい3回転ルッツ―3回転ループを組み込んだり、ほとんどジャンプで両手を挙げてGOE加点を引き出したりするなど、技術面では他の追随を許さない内容だった。
「ミスは絶対にしてはならないと感じていました。これが、やる気と心配を同時に呼び起こしました。手が震えましたが、練習で何度も繰り返したことを体が覚えてくれていたので、自然に体が動いて演技ができました。自分がチャンピオンになったなんて信じられない」と素直に喜び、試合後の表彰式で表彰台にうれしさの余り、ジャンプして飛び乗った場面は、15歳らしい幼さが垣間見られて微笑ましかった。
シニアデビューシーズンで出場した試合全てで優勝を成し遂げ、無敗街道まっしぐらでロシア女子として初めて五輪女王の座まで上り詰めた。1998年長野大会を15歳8か月10日で五輪を制したタラ・リピンスキー(米国)に次ぐ、史上2番目の15歳9か月4日の五輪女王のこれからの成長がどうなるのか、少し心配でもあるが、大きな楽しみでもあるだけに、今後の活躍を期待していきたい。
(辛 仁夏 / Synn Yinha)