井上尚弥のプロ意識が熱を帯びた 真剣度100%に秘めた参戦理由「そのために出た」
試合後に比嘉から質問、「なぜ打ち合ってくれた?」の答えとは
観客2548人にスタッフ、報道陣なども含めると、9~11日に行われた3日間の総検査数は述べ4160人だった。この中で新型コロナウイルスに特徴的なRNAが検出された数はゼロ。最大限安全に配慮して開催され、井上は「安心して見られるというのは重要。これをきっかけにこういうイベントがどんどん行われていってほしい」と、今回の新たな試みが広がることを願った。
対戦相手に比嘉を指名したのもファンのためだった。当初は「なかなか決まらなかった」と受けてくれる相手探しに苦慮。そんな中、同じバンタム級で世界王座を狙う比嘉を指名した。これも「ファンがどんなスパーを見たいか」という視点を大事にしたから。2歳下の元王者も、わずか2週間前にも関わらず快諾した。
井上はまさしく胸を貸すように多彩な技を見せつけた。あえて比嘉の距離に合わせて戦うシーンも。本来なら打たせずに打つのがモンスターの真骨頂。試合後、息を切らす比嘉に問われた。「なんで打ち合ってくれたんですか?」。答えは明白だった。
「盛り上げるためだよ」
世界のファンも魅了される、積み上げられたボクシング技術。いずれ世界戦でも拳を交える可能性がある相手に対し、存分に披露した。試合後の会見では、対峙した上で感じ取ったこと、本当の試合ならどうなるか、といったような質問が多く飛んだ。
しかし、この日の井上にとっては、さほど大きなテーマではなかったようだ。「一番は自分がどうとかよりも、今日は見てくださる方がどう感じるか。そこだけだと思う」。会見をこう締めくくり、会場を後にした。背中からは熱を帯びたプロ意識が溢れ出ていた。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)