コロナ禍でも屈しない 集団感染の過去、天理大が示した危機からの“立ち上がり方”
主将「部員が本当に我慢した」、4トライ市川「一つの目標がチームを一つにした」
故・平尾誠二氏を擁した同志社大以来となる関西勢36大会ぶりの日本一。天理高OBの小松監督は留学を経て同志社大に入学した。平尾氏と年齢は同じだが、3学年下の後輩として関西勢最後の優勝を経験。自身が4年時は決勝で早大に敗北した。運命のような巡り合わせで最多16度の優勝を誇る王者を撃破。初優勝の壁に何度も跳ね返されてきた指揮官は、“36大会ぶりの価値”についてこう明かす。
「関西のチームが同志社から勝っていない。決勝に行ったのも同志社と天理だけ。関西で同志社に次いで2校目になりたいという思いはずっとありました。今まで決勝まで行って勝てていないチームが、筑波大さん、東海大さん、それと天理大。まず天理大はそこにたどり着きたいと常々思っていました。
ただ、大学ラグビーの伝統校は強くて、昔から同じようなところ。たくさんの大学が優勝できていない。そこに仲間入りすることは非常に敷居が高いという思いを持ちながら、過去2回悔しい思いをしてきました。そこを乗り越えて関西で同志社に次ぐ2校目になれたことは嬉しいです。
関西のチームでもまた優勝できるんだと。我々がこうやって勝つことで励みになる。関西のチームでも、努力次第では日本一になれることを関西の学生たちみんなにわかってもらえたら。そうすれば、関西リーグの全体的なレベルが上がっていくのではないかと期待しています」
花園で活躍した選手が関東の伝統校に進むことが多い。会見場で指揮官の隣に座る主将のFL松岡大和は「関西でも関東に負けじと食らいついていけばチャンスはあるぞと。関西のラグビー選手に勇気を与えられたかなと思います」と続いた。兵庫・甲南高出身の自分だけでなく、大阪・日新高出身の市川など花園出場経験のない部員が多い。そんな中でエリート軍団の王者に競り勝った。
コロナ禍のシーズンを戦い抜いた小松節夫監督は「我々だけでは到底乗り越えられなかった。本当に大学、天理市民の皆様のおかげで戦うことができた」と感謝。主将も試合直後の場内インタビューで「この1年間いろいろあったけど、部員が本当に我慢した。支えが合って今がある。メンバー外のみんな、応援してくださった方々、本当にありがとうございました!」と涙を流して絶叫した。
市川は言う。「一つの目標を持つことがチームを一つにした」。コロナ禍で屈することなく、多くの支えを受けながら立ち上がる姿を見せた。さらに関西の“叩き上げ”でも勝てることを証明。大きな意味を持つ日本一だった。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)