内村航平が国民に訴えた「全ての本音」 五輪実現へ「SNSでは意味がない」生の言葉
五輪実現にはトライ&エラーが必要、体操と同じ発想を
今大会は国際体操連盟が主催し、日本、ロシア、中国、米国の計30人が出場。検温、消毒など徹底した感染対策が講じられ、来夏の東京五輪に向けた試金石とされていた。選手のホテルは国ごとにフロア貸し切りとなり、移動は食事会場だけ。一般の宿泊客との接触を避け、食事会場も国ごとに分けられた。大会会場は入場制限を設けられ、観衆は2094人。大型空気清浄器、入り口の全身ミスト除菌、顔認証検温装置……。できることはすべてなされた。
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しかし、徹底に徹底を重ねた中で、内村がアクシデントに見舞われた。合宿中に受けた10月28日のPCR検査で陽性反応。大会が中止になる可能性も頭をよぎった。結局、複数回の再検査で偽陽性に。2日間の隔離で練習ができなかったが「五輪に向けてこれくらいイレギュラーがあっていい。対策はやりすぎくらいでいいし、やりすぎくらいやった上でどれを引いていくか考えればいい」とプラスに捉えた。
トライ&エラー。できなかった技をできるようにするには、どうすればいいのか。五輪開催にも同じような発想が求められることを強調した。
五輪で個人総合連覇、団体金メダルにも導いたスーパースター。五輪の熱、意義、夢の舞台を目指す尊さは知っている。「生まれた国で五輪ができるのは幸せなこと」。東京五輪を見据え、両肩痛などの影響で種目別の鉄棒に専念。この日は、東京五輪への切り札となるH難度の大技「ブレトシュナイダー(コバチ2回ひねり)」を成功させた。
15.200の高得点でこの日一番の拍手を浴び、スタンドに向かって右拳を突き上げた。観客の声援は禁止だが「立ち上がって声援を上げたいくらいの演技ができれば」と開会式で宣言した通りの演技。ファンの表情もマスク越しに熱を帯びた。
「さっきのスピーチでは僕の本音が全て出ていた。五輪に向けてこの試合がいいモデルケースになったと思う。他の競技の選手にも情報を共有できる。参考にしてもらえると思うので、国際大会を有観客でできたのは意味がある大会だと思う。あとは本当に国民の皆さんの支持が上がればと思います」
この日の会場周辺では、横断幕を掲げ、スピーカーを手に東京五輪開催への反対運動をする人たちがいた。東京五輪はできるのか、できないのか。すべきなのか、すべきでないのか。「どう考えても……」と片方を否定するのは簡単だが、内村の言う「どうやったらできるか」をちょっと考えてみることも実は簡単なことかもしれない。
(THE ANSWER編集部・浜田 洋平 / Yohei Hamada)