“最後のシーズン”が2月1日開幕 岐路に立つサンウルブズに残された選択肢…CEO激白
サンウルブズ自体にも課題は山積、TLとの日程重複のためにメンバーは若手主体に
対SANZAARという視点で問題点を指摘してきたが、その一方でチーム自体にも課題が少なくない。
【特集】“欽ちゃん球団監督”片岡安祐美の今 2度の流産を経て母に…思春期の後悔「生理に見て見ぬふりを」
(W-ANS ACADEMYへ)
強烈なワンツーパンチになったのは“除外”の決定と、国内シーズン日程の改編だ。除外問題はここまで触れてきた通りだが、多くの外国人選手は今季が終われば職探しが必要なサンウルブズ残留よりも新たな海外のオファーへと流出している。さらに、ワールドカップ開催の特例で、トップリーグが開幕を1月に変更。公式戦シーズンがSRと完全に重なってしまったために、多くのトップリーグ選手がサンウルブズでのプレーを諦めざるを得なくなったのだ。
1月29日の時点で、日本代表のワールドカップメンバーでサンウルブズに参加する選手は1人もいない。代表メンバー以外でも、トップリーグで主力として期待される選手の大半は不参加だ。この厳しい状況の中で、渡瀬CEOも「姫野(和樹、トヨタ自動車FL)とかは、来てほしいですけど難しい。無理だとわかったら切り替えて、齋藤(直人、早大SH)君とか(シオサイア・)フィフィタ(天理大CTB)のような若手を呼んでいます」と、将来性を期待される若手主体の編成へのシフトチェンジに踏み切った。
メンバー選考については大久保直弥ヘッドコーチを中心に進めているが、同CEOは「若手選手については、ジェイミー(ジョセフ、日本代表ヘッドコーチ)と、昨年のワールドカップ後や国際電話で話し合ってきた。彼に『こういう選手入れたい。若手選手で、こうこう方向性を考えている』と説明して同意も得ている。すぐにジャパンになれるかはわからないが、4年後、8年後には間違いなく――という選手たちです。4年後って、いま22歳の選手でも26ですからね。思い切ってどこかで舵を切ることは必要ですし、テストマッチでそれをやるのは難しい。なのでサンウルブズで、ジェイミーにおもしろい若手を見せられるようにしていきたい」と日本代表サイドとの連携を取りながら、未来のジャパン育成に力を注いでいく。
ワールドカップの熱気が冷めない中で開幕を迎える2020年シーズンへ、同CEOは「間違いなく注目度は上がると思いますし、それがいちばん表れるのはチケット販売だと思う。これはよくみていかないといけないと思いますし、あとは我々からの情報発信の仕方も考えていきたい。たとえば、いま一番知名度のある海外チームは南アフリカですから、その主将のシア・コリシ(ストーマーズFL)と対戦するとか、我々が試合をどう見せるか、サンウルブズはこんなチームとやるんだと発信していかないといけない」と発信力の強化にも力を注ぐ。危惧されたチームスポンサーも、複数年契約が多かったこともあり継続して支援する企業が多い。新しい契約についても、話し合いが続いているという。
既定路線を走り続ければ“除外”という終着駅が待っている。この路線を変えるためには、スポンサーシップも含めた新たなサンウルブズの存在価値をSANZAARサイドに認めさせるしかない。渡瀬CEOをはじめ、チームのマネジメントサイドの相当な“離れ業”がなければ難しいだろう。
その一方で、同時進行で検討してほしいのは、先に挙げた「2」の選択肢だ。サンウルブズより早い2017年にSRから締め出されたウェスタン・フォース(オーストラリア)は、いまだに国際試合を組むなど運営を続けている。過去に日本とSR入りを争ったシンガポールをベースにしたパシフィック・ドラゴンズや、北米で発足したばかりの新リーグ、欧州のリーグからオフシーズンのクラブや、臨時編成の選抜チームを集めた新たな国際リーグを、サンウルブズ主導で立ち上げるようなプランがあってもいいはずだ。
日本国内でも2021年スタートの新リーグ構想が進んでいるが、このリーグに国際レベルの競争力がなければ、日本代表の強化にも影響するのは否めない。サンウルブズが国内リーグに参加したり、チーム自体を廃止する選択肢「3」はたやすいが、SRないしはそれに準じるステージでの日本選手の強化を続けるのであれば、この“日出る国の狼たち”を国際舞台で生かす価値は大きいはずだ。
(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)