古代ギリシャのアスリートは何を食べてた? 知ってみると興味深いスポーツ栄養の歴史
Jリーグやラグビートップリーグをみてきた公認スポーツ栄養士・橋本玲子氏が「THE ANSWER」でお届けする連載。通常は食や栄養に対して敏感な読者向けに、世界のスポーツ界の食や栄養のトレンドなど、第一線で活躍する橋本氏ならではの情報を発信する。今回は「海外スポーツ栄養オンライン講習会レポート」。
公認スポーツ栄養士・橋本玲子氏の連載、今回は「海外スポーツ栄養オンライン講習会レポート」
Jリーグやラグビートップリーグをみてきた公認スポーツ栄養士・橋本玲子氏が「THE ANSWER」でお届けする連載。通常は食や栄養に対して敏感な読者向けに、世界のスポーツ界の食や栄養のトレンドなど、第一線で活躍する橋本氏ならではの情報を発信する。今回は「海外スポーツ栄養オンライン講習会レポート」。
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10月、スポーツ栄養に関わる世界各国のスペシャリストによるオンライン講習会「World wide Nutrition Conference」に参加。なかでも、運動代謝の権威、イギリス・ラルバラー大学のアスカー・ユーケンドロップ教授による、スポーツ栄養の歴史と未来についての話は、非常に興味深いものでした。
学問としてのスポーツ栄養学が確立されたのは最近ですが、スポーツと栄養が密接に関係することは紀元前からわかっていたとされています。
ユーケンドロップ教授の話で特に面白かったのは、「古代ギリシャ人のアスリートは何を食べていたのか?」についてです。当時のアスリートは、雄牛の血を飲み、睾丸を食べることがよいと考えられていたとのこと。そして、古代オリンピックのレスリング競技で、6連覇を果たしたといわれるクロトンのミロ(紀元前6世紀頃)は、1日9kgの肉、9kgのパン、8.5リットルのワインを飲み、子牛を肩に担いで今でいう筋力トレーニングをして鍛えていたという記録が残っているそうです。
持久系スポーツでは、古代ギリシャの軍隊に所属していたメッセンジャーの食事が興味深いものでした。国をまたいで伝令を運んでいた彼らは、現代スポーツでいう長距離ランナー。任務の際は、フィグ(いちじく)、オリーブ、干し肉、はちみつとゴマをペースト状にしたものを携帯していたそうです。
メッセンジャーの食材を一つひとつみていくと、エネルギー源となる糖質と、筋肉のダメージを修復するタンパク質、そしてビタミンやミネラルも豊富です。彼らがそれを選んだのは、栄養を知ってのことか経験値からなのかはわかりませんが、携帯に便利でかつ効率のよい食材ばかりで素晴らしいなと思いました。また、エネルギー源にナゼいちじくを選んだのかと調べたところ、古代ギリシャでは大変、栄養価が高いものとして捉えられていたそう。アスリートたちの間では、筋肉量を増やしスタミナを維持するのに有効だと考えられていたため、主食代わりに食べていたようです。
講義は続いて、スポーツ科学の観点から、今後、どんなことが注目されるのかという内容に移りました。
ユーケンドロップ教授が挙げたキーワードは3つ。「Nutrition training(栄養とトレーニングの統合)」「Real food not nutrients(栄養素ではなく食べ物で)」そして「Personalized nutrition(個別栄養)」です。