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「東北『夢』応援プログラム」の成果発表イベントに競泳・伊藤華英さんが登場

競泳で北京、ロンドンと五輪2大会に出場した元日本代表スイマー・伊藤華英さんが、公益財団法人東日本大震災復興支援財団が立ち上げた「東北『夢』応援プログラム」のイベントに岩手・大船渡で3月26日に登場。昨秋から約半年間、水泳指導を行ってきた子供たちの集大成となる「成果発表イベント」が行われ、9人が参加した。7年間にわたった「東北『夢』応援プログラム」もひと区切りとなり、新たな出発を切ることになった。

「東北『夢』応援プログラム」の成果発表イベントに登場した伊藤華英さん【写真:村上正広】
「東北『夢』応援プログラム」の成果発表イベントに登場した伊藤華英さん【写真:村上正広】

大船渡の子供たちを指導した7年間 競泳・伊藤華英さんが築いた絆、これからも繋がる未来

 競泳で北京、ロンドンと五輪2大会に出場した元日本代表スイマー・伊藤華英さんが、公益財団法人東日本大震災復興支援財団が立ち上げた「東北『夢』応援プログラム」のイベントに岩手・大船渡で3月26日に登場。昨秋から約半年間、水泳指導を行ってきた子供たちの集大成となる「成果発表イベント」が行われ、9人が参加した。7年間にわたった「東北『夢』応援プログラム」もひと区切りとなり、新たな出発を切ることになった。

 岩手・大船渡の沿岸、4コースだけの小さな25メートルプールに子供たちの大きな声が響いた。

 伊藤さんが参加した「東北『夢』応援プログラム」は、公益財団法人東日本大震災復興支援財団が立ち上げ、年間を通して子供たちの夢や目標を応援するもの。コーチ役の「夢応援マイスター」を務めるアスリートが、参加する子供たちが掲げる半年から1年後の約束に向け、遠隔指導ツールでサポート。1日限りのイベントで交流を終えるのではなく、離れた場所でも動画やSNSを通じて継続したプライベートレッスンが受けられる画期的な試みだった。

 2016年から岩手・大船渡の子供を対象に指導する伊藤さんは、昨年11月にスタートした新たなプログラムで小学1年生から6年生まで10人を担当した。月に1回、それぞれの子供から送られてくる泳ぎの動画をチェックし、アドバイスを添えて返信。東京と大船渡の距離を越え、子供たちの上達を見てきた。

9人の子供たちに指導を行う伊藤さん【写真:村上正広】
9人の子供たちに指導を行う伊藤さん【写真:村上正広】

 1月に開催された中間発表イベントはオンラインだったが、今回は初回の夢宣言イベント以来の対面方式。半年間の集大成としてタイム測定が行われる。この日は9人の子供たちが参加。プールサイドで再会した伊藤さんは「毎月、みんなが一生懸命やってくれました。今日は緊張しないで頑張って、25メートルを全力で泳いでください」と笑顔でエールを送った。まずは指導の復習を兼ねた水泳クリニックから行われた。

 伊藤さんはキックやけのびなど、基本的な指導を行った。「どんな泳ぎでも大切なのは目。泳いでいる時にあちこち見るのではなく、ずっと同じところを見ること。目が決まると、良い泳ぎになります」などとアドバイス。さらに、元オリンピアンが個人メドレーの4泳法を披露する豪華な一幕も。子供たちは隣のコースから間近で見つめたり、水中に潜って動きを観察したり、必死に学習。その上で、本番となるタイム測定が行われた。

 見守るメンバーの拍手を受けながら、9人はそれぞれ取り組んできた泳法で25メートルを泳ぐと、全員が半年前よりタイムを短縮。なかには3秒近く縮めた子もいた。タイムを聞いた子供たちは自らの成長を実感し、どこか嬉しそうだった。

イベントの最後に修了証授与式を行い、伊藤さんは子供たちにメッセージを送った【写真:村上正広】
イベントの最後に修了証授与式を行い、伊藤さんは子供たちにメッセージを送った【写真:村上正広】

伊藤さんからのメッセージ「主役はみんな、私はサポートするだけ」

 場所を室内に移して行われたのは修了証授与式。子供たちは半年間で成長したこと、課題に感じたことなどの感想を一人一人発表していく。

「苦手だった平泳ぎが少し克服できた。もっとタイムが縮められるようにフォームをもっと良くしたい」「半年間、華英さんに教えてもらったことがしっかりとできた。これからも教えてもらったことを思い出して、練習をしたい」「タイムが縮められてうれしかった。でも、クロールの呼吸で腕が下がる課題があるので、これからもっと頑張りたい」など堂々と発表を行い、伊藤さんも温かいまなざしで見守った。

 そして、締めくくりに質問コーナーも実施。今回参加した小学6年生4人は全員、中学進学後も水泳を続けるという。中学生以降の大切なことについて問われた伊藤さんは「もう(水泳の継続を)決めていることは素晴らしい。でも、まずは楽しくやること。『やらなきゃいけない』と思うと楽しくない。好きなことを見つけに行く場所が学校だから。水泳に限らず、何が自分に合っているんだろうということを探してみてほしい」と親身になってアドバイスを送った。

 伸び悩んだ時はどう対処するか、今年の世界水泳の注目ポイント、さらに見守っていた保護者からも「試合で失敗して、すぐまた次の週に試合がある。そういう時に親はどう声かけをすればいいな」という質問が飛び、伊藤さんはその一つ一つ誠実に答えていった。

 およそ2時間半にわたったイベントもあっという間にクライマックス。最後に半年間を振り返り、伊藤さんは「みんな、とても一生懸命にやってくれました。(動画指導で)言った言葉を聞いて、次の月にその言葉通り泳いでくれて、フィードバックを生かしてくれていると感じていました。主役はみんな、私はサポートするだけ。一生懸命やらないと、ベストを尽くさないと成り立たない。そのなかですごく頑張ってくれました」と労った。

 さらに、これからの人生に向けたエールも。「厳しいことも言ったかもしれないけど、みんながこれからどんな未来を歩んでいくかは自分自身で考えて、進んでいかないといけない。みんなが考えて出したそれぞれの答えが正解だから。水泳を通じて、そうしたことも学んでくれたらうれしいです」と伝えた。子供たちが伊藤さんの目をまっすぐに見つめ、一つ一つの言葉に聞き入っている表情が印象的だった。

 2011年東日本大震災の復興・支援をきっかけに、東日本大震災復興支援財団が立ち上げた東北夢応援プログラム。今回参加した子供も大半は震災後に生まれた世代。街も着実に復興を遂げており、財団としてのイベントは今回で一区切りとなるが、伊藤さんによる大船渡の指導・支援は形を変え、今後も継続されていく。

 伊藤さんが言った「主役はみんな、私はサポートするだけ」、深い絆で結ばれた関係はこれからも変わらない。

(THE ANSWER編集部)

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