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アテネ五輪代表、伊藤友広氏が「東北『夢』応援プログラム」で本当に伝えたかったこと

アテネ五輪の陸上1600メートルリレー代表で4位に入賞した伊藤友広氏が18日、岩手・宮古市の宮古運動公園陸上競技場で行われた「東北『夢』応援プログラム」に出演した。昨年4月に始まったかけっこ指導。1年間、動画による遠隔指導を利用し、取り組んできた成果発表が行われ、伊藤氏は子供たちの成長ぶりに目を細めた。

アテネ五輪の陸上1600メートルリレー代表で4位に入賞した伊藤友広氏【写真:村上正広】
アテネ五輪の陸上1600メートルリレー代表で4位に入賞した伊藤友広氏【写真:村上正広】

タイムよりも大事なもの… 元五輪スプリンターが東北の子たちに伝えたかったこと

 アテネ五輪の陸上1600メートルリレー代表で4位に入賞した伊藤友広氏が18日、岩手・宮古市の宮古運動公園陸上競技場で行われた「東北『夢』応援プログラム」に出演した。昨年4月に始まったかけっこ指導。1年間、動画による遠隔指導を利用し、取り組んできた成果発表が行われ、伊藤氏は子供たちの成長ぶりに目を細めた。

 寒風吹きすさぶ、宮古の陸上競技場に子供たちの元気いっぱいの声が響いた。気温0度に迫る中で、それを吹き飛ばす熱気で満ち溢れた。その中心にいたのがコーチ役の伊藤氏だ。

「夢応援マイスター」の伊藤氏は、昨年4月から1年間、遠隔指導ツールの「スマートコーチ」を活用し、技術指導を重ねてきた。その成果発表の日がこの日だ。毎月オンライン上でやり取りし、指導を受けてきた子供たちからも、微かな緊張感が漂ってきた。

「みんな一生懸命頑張ってくれたと思います。陸上の良いところは持ちタイムが縮むこともそうですが、動きが良くなったり、今の自分の成長を感じられるところ。いつも通りにやって、これまでの成果を出してください」

 伊藤氏の開会宣言でクリニックがスタートした。普段は学校の校庭を使っての練習だが、この日は本格的な陸上競技場のトラックを使用できるとあって、同氏は特別なプログラムを組んだ。「スタートブロック」を使用してのスタートの練習や、「運動会のリレーでも使えると思うので」とバトンを使用して、本格的なバトンパスの練習も取り入れた。

約2時間のクリニックで、伊藤氏の指導にも熱が入った【写真:村上正広】
約2時間のクリニックで、伊藤氏の指導にも熱が入った【写真:村上正広】

1年間の成果発表、50メートル走のタイムが1秒以上縮まった生徒も

 約2時間のクリニック。伊藤氏の指導にも熱が入った。手取り足取り、一人一人に丁寧にアドバイスを送った。また目立ったのは「上手だね!」「いいね!」「素晴らしい!」など子供たちをほめる言葉だ。そして子供たちも応え、この日のわずかな時間の中でも、また成長していった。

 400メートルのトラックをフルに使ってのリレーが行われた。参加した小学校2~6年生、計32人が8人ずつ4組に分かれてのリレー。先ほど教わったばかりのバトンパスの成果を実践する場だったが、1人50メートルずつ走ってのバトンリレー競争となれば一気に白熱する。抜きつ抜かれつの攻防が繰り広げられ、その光景を伊藤氏は暖かいまなざしで見守った。

 最後は50メートル走のタイム測定だ。遠隔始動を受けた7人の中で、田中結音さん(6年)が7秒88を記録するなど7秒台をマークした生徒が2人。そして1年前の指導開始時は9秒3だった古屋生吹くん(5年)は8秒04と、1秒26もタイムを縮めた。その他の生徒も全員がタイムを短縮することに成功。子どもたちの満面の笑顔に、伊藤氏も「よく頑張ったと思います」と思わず目を細めた。

 タイムはもちろんだが、何よりも大きいのは自信が得られたことだ。伊藤氏は「足が速くなるということを目指す中で、自分が決めたものをクリアしていく。こっちはその手助けとなる材料を提供するだけ。乗り越えていく喜びは大きいと思います」と強調。結果よりも、そこに至る過程を経験したことに何よりも価値があるという。

閉会式の後には、全員での記念撮影も【写真:村上正広】
閉会式の後には、全員での記念撮影も【写真:村上正広】

価値があるのは“タイム”よりも“自信”、伊藤氏の望みは「頑張れる人間になって欲しい」

 閉会式の後には、全員での記念撮影。そして最後のセレモニーとして、指導を受けてきた7人は1年を振り返って、伊藤氏にこれまでの成果を一人ずつ報告した。「スタートダッシュがうまくなった」「タイムを縮めることができた」「最後まで全力で走ることができるようになりました」「伊藤先生に教えてもらったことをこれからも生かしていきたい」と生徒たちは充実感いっぱいの表情を浮かべていた。

 そして新たなスタートも決まった。2018年度の遠隔指導を受ける生徒たちは期待に胸を膨らませ、「将来の目標」「1年後の目標」などを。中には2年連続での指導を希望した生徒もいた。

 “伊藤塾”を卒業していく子、そして新たな指導に心を躍らせる子――、そんな宮古の少年少女へ向けて、伊藤氏はエールを送った。

「自分の中で試行錯誤を繰り返して、改善していく。こうすれば良くなっていくんだということを感じてほしい。そして陸上以外でも頑張れる“人間”になって欲しいですね」。一流アスリートからの指導というかけがえのない体験を経て、陸上選手として、人間として、一回り大きくなったに違いない。

(THE ANSWER編集部)

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