[THE ANSWER] スポーツ文化・育成&総合ニュースサイト

半年間指導した「東北『夢』応援プログラム」の成果発表イベントに参加

競泳で五輪2大会に出場した元スイマー・伊藤華英さんが、距離を越え、みちのくの子供たちの成長を見守る半年間を過ごした。24日、「東北『夢』応援プログラム」の成果発表イベントに参加。昨年10月から指導してきた参加者とオンラインで交流し、半年間のプログラムのゴールを迎えた。

「東北『夢』応援プログラム」の成果発表イベントに伊藤華英さん(右上)が参加した【写真:編集部】
「東北『夢』応援プログラム」の成果発表イベントに伊藤華英さん(右上)が参加した【写真:編集部】

子供たちが「泳ぎがもっと好きになった」 伊藤華英さんが見守った大船渡の10人の成長

 競泳で五輪2大会に出場した元スイマー・伊藤華英さんが、距離を越え、みちのくの子供たちの成長を見守る半年間を過ごした。24日、「東北『夢』応援プログラム」の成果発表イベントに参加。昨年10月から指導してきた参加者とオンラインで交流し、半年間のプログラムのゴールを迎えた。

 伊藤さんが参加した「東北『夢』応援プログラム」は、公益財団法人東日本大震災復興支援財団が立ち上げ、年間を通して子供たちの夢や目標を応援するもの。コーチ役の「夢応援マイスター」を務めるアスリートが、参加する子供たちが掲げる半年から1年後の約束に向け、遠隔指導ツールでサポート。1日限りのイベントで交流を終えるのではなく、離れた場所でも動画やSNSを通じて継続したプライベートレッスンが受けられる画期的な試みだ。

 2016年から岩手・大船渡の子供を対象に指導する伊藤さんは、昨年10月にスタートした新たなプログラムで10人を担当した。月に1回、それぞれの子供から送られてくる泳ぎの動画をチェックし、アドバイスを添えて返信。東京と大船渡の距離を越え、子供たちの上達を見てきた。

 今回は新型コロナの感染状況を鑑み、1月の中間発表に続き、オンライン開催。しかし、伊藤さんが「皆さん、いつも動画ありがとうございます。コロナの影響で不便なこともたくさんあったと思うけど、こうやってみんなと会えて、うれしく思います」と挨拶すると、Zoom上にはこの日参加した9人の笑顔が並んだ。

 イベントはまず伊藤さんによるクリニックからスタート。現役時代に行っていたストレッチ方法などを教え、子供たちと一緒に実践した。続いて行われたのが、この日のメインとなる成果発表。事前に撮影した泳ぎの動画を伊藤さんに見てもらいながら、それぞれ半年間の取り組みを振り返った。

 子供たちから挙がったのは、一様に成長を実感した声。「けのびが3秒できるようになったし、バタ足がしっかりできるようになった」「半年間頑張ったし、自分の実力を出せた」「泳ぐのはもともと好きだったけど、もっと好きになった」というもの。ただ、これに満足することなく「もっとキックを安定させたい」「入水の時の手の位置やタイミングを上手にしたい」という声も上がり、自らの成長に余念がない様子だった。

参加者の一人「“夢プログラム”のおかげで、プールが楽しくなりました」

「華英コーチのおかげで泳ぎが美しくなって感動した」という感想には思わず笑みをこぼした伊藤さんも、画面に共有された映像を見ながら一人一人に講評。「背泳ぎは難しかったけど、チャレンジしたことが素晴らしかった。タッチも怖がらずにできて素晴らしい」「動画(のアドバイス)を毎回、一生懸命見てくれている。入水もキックも良くなった。自信を持ってほしい」など、各自が成長したポイントを挙げながら褒めた。

 また、泳ぎについても具体的にアドバイス。バタフライを泳いだ小学4年生の女の子には「タイミングはだいぶ合ってきているので、膝が曲がって足が(水面に)出ると疲れやすい。第1、第2キックの強弱がつくと、もっといいし、今のタイミングでさらに進むようになります」、クロールを泳いだ小学4年生の男の子には「入水は手のひらを斜めにして入れること。そして、入水した後にすぐにかかずにぐーっと伸ばすと、ストリームラインを取りやすくなります」など。

「みんな、動画を毎月とってもよく見て、聞いてくれて(アドバイスを)しっかりと生かした泳ぎができていた。一つ一つの動作が丁寧にできていたという全体の印象です」と総括。直接会えなくとも、成長できる方法はある。それを証明したような半年間。「“夢プログラム”のおかげで、プールが楽しくなりました」という一人の参加者の感想に、今回のプログラムの充実ぶりが表れていた。

 最後には質問コーナーも。元オリンピック選手と交流できる貴重な機会とあり「住所はどこですか?」「この後、お昼ごはん何食べますか?」「子供の時に好きだった遊びは何ですか?」というものから「練習の前や後は何を食べたらいいですか?」という実践的なものまで。

 食事の質問に、伊藤さんは「練習前はおにぎりがいいかな」とアドバイス。現役時代の食生活も明かし、「朝練の前におにぎり2個とゼリー飲料。朝練が終わって、さらに朝ごはん。お昼ごはんを食べた後は、昼寝の前にパン、昼寝の後にパン。それで練習に行って夕飯を食べていた」と話した。

「凄い量でしょ? 人間は19歳まで骨が成長していくと言われているので、それまでにたくさん食べて、動いて、骨を丈夫にしてほしい。練習後は30分以内にごはんを食べるのをオススメします」と助言。子供たちも真剣なまなざしで聞き入っていた。

成果発表会はオンラインで開催され、子どもたちから伊藤さんに感謝の言葉が送られた【写真:編集部】
成果発表会はオンラインで開催され、子どもたちから伊藤さんに感謝の言葉が送られた【写真:編集部】

伊藤さんから子供たちへ「一生懸命にいろんなことにチャレンジを」

 あっという間に過ぎていった1時間。今回の半年間のプログラムはこれで終了したが、伊藤さんと大船渡の縁がこれで切れるわけではない。これからもプログラムは続き、つながっていく。感謝の想いを込め、伊藤さんは子供たちにメッセージを送った。

「(2016年に)始まった時はコロナも想像していなかった。こうやって皆さんと長くお付き合いできてうれしいです。これだけ長くプログラムが続いている理由は、大船渡にいるみんなや先生が一生懸命やっているから。そのおかげでつながっていられるし、ありがとうという気持ちでいっぱい。私が一生懸命やっても、みんなが一生懸命やってくれないと成果にはつながらない。みんなが上手になっているということは、みんなが一生懸命やっていること。一生懸命できた自分に自信を持ってほしい。環境が変化したり、世界で悲しいニュースが多かったり、さまざまなことが周りで起きていると思います。

 でも、みんな一人一人が将来を考えたり、今あるものを一生懸命頑張ったりすることで、自分への自信や周りの人への優しさにつながる。ぜひ、一生懸命にいろんなことにチャレンジしてくれたらと思います。チャレンジをすれば、成功も失敗もきっとある。だからこそ、人にも優しくなれると思うので。まずは自分が頑張ること。そして、先生、家族に感謝を忘れずに過ごしていけば、世界は変わっていく。水泳を通して、いい人に育っていってほしいし、勉強もしたり、ほかのスポーツもしたり、頑張ることを学んでほしい。私もしばらく会えていないけど、大船渡に心を寄せながら過ごしていきます」

(THE ANSWER編集部)

伊藤 華英

 日本代表選手として2012年ロンドン五輪まで日本競泳会に貢献。2004年アテネ五輪出場確実と騒がれたが、選考会で実力を発揮できず、出場を逃す。水泳が心底好きという気持ちと、五輪にどうしても行きたいという強い気持ちで、2008年女子100m背泳ぎ日本記録を樹立し、初めて五輪代表選手となる。

 その後、メダル獲得を目標にロンドン五輪を目指すが、怪我により2009年に背泳ぎから自由形に転向。自由形の日本代表選手として、世界選手権・アジア大会での数々のメダル獲得を経て、2012年ロンドン五輪・自由形の代表選手となる。2012年10月の岐阜国体を最後に現役引退。

 引退後、ピラティスの資格取得とともに、水泳とピラティスの素晴らしさを多くの人に伝えたいと活動中。また、スポーツ界の環境保全を啓発・実践する「JOCオリンピック・ムーヴメントアンバサダー」としても活動中。

W-ANS ACADEMY
ポカリスエット ゼリー|ポカリスエット公式サイト|大塚製薬
DAZN
ABEMA Jleague
スマートコーチは、専門コーチとネットでつながり、動画の送りあいで上達を目指す新しい形のオンラインレッスンプラットフォーム
THE ANSWER的「国際女性ウィーク」
N-FADP
#青春のアザーカット
One Rugby関連記事へ
THE ANSWER 取材記者・WEBアシスタント募集