戦力外も経験、コーチで残れた球界を離れ… 西武本拠地で球場メシを作る元西武戦士の今
食への興味が沸いた30代…ジョコビッチの一冊もきっかけ
食への興味が沸いたのは30歳の頃。しっかり寝て、練習量も考えてこなしていたが、疲労の抜けが遅くなっていた。自分なりに行きついた原因は食事面。1人暮らしで外食やスーパーの惣菜を好きなだけ食べることも多く、バランスを気にしていなかった。食事改善でかなりの効果を実感したのがきっかけだ。
影響を受けた一冊もある。ふと立ち寄った遠征先の書店で、偶然手に取ったのが「ジョコビッチの生まれ変わる食事」。異競技ではあるが、世界一に君臨した男も食事改善で体調を一変させていたことに驚いた。
「彼の場合は、穀物に含まれるたんぱく質を摂取しないグルテンフリー。良かれと思ってパンや麺、小麦をたくさん食べていたけれど、実は自分の体に合っていなかった。効果は人によるとは思いますが、僕も実際にやってみて凄く効果を感じました」
西武を戦力外となり、日本ハムで選手兼コーチ補佐として迎えた現役最終年。開幕から数か月で「選手としては厳しいな」と自覚した。同時に、選手として球界に残れないのであれば、一度外の世界で違う経験をしたい考えもあった。「翌年も同じ契約を考えていると言ってもらって凄く悩みました。でも、違う道に行ってみようと」。以前から興味があった「食」に関わる事業に進出した。
2017年、東京・下北沢にヘルシー志向のカフェレストランをオープンした(2021年、BACKYARD BUTCHERSの開業に合わせて閉店)。札幌に住んでいた2歳上の兄、結婚した妻の力も借り、調理の腕も磨きながらオーガニック、グルテンフリーなどこだわりのメニューを提供。「想像以上に大変だった」スタートアップ期間を経て、外国人や若年層から好評を得ていた。
外国人客からは「ビーガン食はないのか?」との要望も多かった。思えば米カリフォルニアで食文化の視察を行った時、現地の若い女性にビーガン食が人気で、「健康食=地味」というイメージが覆されていた。早速ビーガンのカレーやマフィンをメニューに追加したところ、日本人も含めリピーターが付き、思った以上の需要を得られた。
「カリフォルニアでビーガン食というと、実はポップな感じで店の雰囲気も明るい。環境、健康に優しいという面でも今の時代に合っているのかなと感じましたし、日本でももう少し広がればいいなと」
レストランの運営も軌道に乗っていた2020年、世界中を新型コロナの脅威が包み込んだ。米野さんの店も打撃を受け、今後を考えていた頃、セカンドキャリアを応援してくれていたライオンズから「店を出してみないか?」と声がかかった。
「正直、球場でお店を開くことは全く考えになかったんです。でも、西武の本拠地に足を運んでみると、自分がいた時よりさらにいい雰囲気になっているし、やりたいお店のコンセプトとも合うと思いました」