“そば工場”から2軍球団へ、異色の4番打者がタイトル争い 大川陽大が覚醒した理由…元虎戦士も助言「納得できる」

打つために必要なのは根性ではない…オイシックスの環境が合った
ここまでの成績は59試合で打率.288、5本塁打、26打点。打率はリーグ4位、66安打は同2位という立派なものだ(29日現在)。ただNPB球団からのドラフト指名には、年齢を重ねれば重ねるほど厳しくなるという側面もある。引退撤回のきっかけとなった家族は新潟まで応援に来てくれる。「だから、プロに行くというよりはいい成績を残す、ベストを尽くすことで、自分も家族もうれしいというのが最大のモチベーションですね」。そして、こうも続けた。
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「こんなに野球に没頭できる環境はありませんよ」
オイシックスの敗戦時の全体ミーティングはあっという間に終わる。武田勝監督の「結果論でものを言わない」という方針によるものだ。負けたことについてはサッと切り替える。ただしうまくいかなかったことについては「なぜ」そうなったのかを突き詰め、改善を目指すのだ。
大川はもともと「根性とか、気持ちでやるタイプではないので。打てないには理由があると思っていますし」という考え方の選手だ。初めて戦うイースタン・リーグで安定した成績を残せるのも、オイシックスの「こうしろというのではなく、ヒントを出してくれる方が多いんです。次々に考えていくというか」という空気が合った一面がある。
上昇のきっかけとなった今季1号ホームランの瞬間が、まさにそうだった。4月25日のヤクルト戦(戸田)。試合前の打率は.225に過ぎず、打順も7番まで下がっていた。ここで突然、アイデアが降ってきた。「バットの振り方です。右手の握り方を全く変えたんです。指先で圧がかかっていたのを、包み込むようにフワッとさせて」。3回1死、走者を2人置いて回ってきた打席。豪快な打球が左中間フェンスを越えていった。そこからはコンスタントに安打を記録。首位打者や最多安打のタイトルまでうかがう勢いだ。
ベンチでは、阪神で新人王に輝いたこともある高山俊外野手の隣に座る。「いろんなことを教えてもらっています。納得できることが多いんです」。ある時、終盤まで1点差で負けている展開で、初球の外角ストレートを見逃したことがあった。「高山さんには『相手はまず本塁打を打たれなくないところ。1球見逃すのはもったいないよ』と言われました」。4番としてチームのために戦う術を、学び取っている。
学生時代からずっと4番を打ってきたスラッガー。それでもNPB経験者の言葉からは、感じるものが多い。人の成長期は、いつ来るかわからない。オイシックスで様々な出会いときっかけをつかんだ大川の飛躍は、実はこれからなのかもしれない。
(THE ANSWER編集部・羽鳥 慶太 / Keita Hatori)
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