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「ユースと部活、どっちが育つのか」 中村俊輔が考える、日本サッカー積年の疑問

部活動で経験した“明確な上下関係”で気づいたこと

 しかし現実は甘くない。クラブユースと一線を画する部活動には明確な上下関係が存在する。高校1年生は全体練習に混ざるどころかグラウンドの隅でボール拾いをするのが仕事だった。昼休みには汚れたボールを磨き、雨が降った日はスポンジを使ってグラウンドに溜まった水を吸い取る。試合出場はおろか練習すらできない、完全なる下積み時代を過ごしたというわけだ。

「マリノスのジュニアユースは人工芝のグラウンドで練習していたし、綺麗なボールに空気がしっかり入っていた。みんながサッカーをやるために集まっていたから、先輩・後輩という意識はあっても、必要以上に上下関係はなかった。だから高校サッカーの世界に足を踏み入れてみてカルチャーショックを受けた部分はある。でも中学時代に一度犯した過ちを繰り返さないようにという思いが強かった」

 また考えた。ボールを蹴るためにはどうするか。いつならば練習できるのか。サッカーが上手くなるためには、どうしたらいいのか。

 出した結論が「朝練」だった。

 当時のサッカー部には朝練がなく、放課後の練習のみだった。そこで中村はグラウンドを自由に使える授業前の時間に目をつけた。

 眠い目をこすりながらも朝6時台の電車に乗り、広いグラウンドで思う存分ボールを蹴った。当時、朝練を行っていた部員は中村を含めて3~4名ほど。顧問の先生もコーチもいないが、それは大きな問題ではなかった。自分自身と向き合い、1時間足らずの練習時間に没頭した。

「誰かが褒めてくれるわけではない。1年生の自分が練習するには朝練しかなかったということ。全体練習後も自主練習はできたけど、遅い時間になると照明を落とされてしまうから。朝なら自分が早く登校したぶんだけボールに長く触れられる。高校2年生の先輩とひたすら1対1の練習をしていた」

 仮に、朝練が禁止されていたら? こんな質問にもまったく意を介さない。

「また考えただろうね。何か方法はあるはずだから。そこで諦めてしまうのは簡単だし、ふて腐れても意味がない。環境は大事だけど、一番大事なのは選手本人だから」

(藤井雅彦 / Masahiko Fujii)

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