625登板→戦力外で引退 元楽天38歳、指導者のいま痛感する“妄想力”と星野仙一の偉大さ
星野さんの指導を踏襲「やる気にさせるのが上手かった」
「練習の最後に必ず、子供たちに『今日は何をやったか?』を聞いて、説明してもらいます。自分で何を学んだか説明できるようになれば、今日の練習をやったことになるよって。継続しないと上手くならないから、野球ってやっぱり難しい。継続のためにも、短い時間でどれだけ忘れさせないで、体に覚えさせてあげられるかが大事だと感じました」
目指しているのは、モチベーションと気付きを与えられる指導者。偉大な星野さんもそうだった。ファームにいる頃も、顔を合わせると叱咤激励をしてくれた。
「冗談で『まだ野球やっとんのか?』とも言われました(笑)。声をかけられること自体が嬉しかったですし、人をやる気にさせるのが上手いなと感じていました」
子供たちに、型にはめる指導はしない。「投げる瞬間に胸が開かない方がいい」「もう少し足をあげてみて」などとちょっとしたポイントを伝えて、重要なことは自分で気付かせる。やってみたい考えがある子供には、やる気を削がないように一度やらせてみる。主体的に考える力を養わせるやり方だ。
今は実技で教えられるが、年齢を重ねれば投げられなくなる時期もやってくる。「実技ではなく、言葉でどうやって気付かせるかが目標であり、理想です」。指導している子供たちが次のステージで活躍してくれればもちろん嬉しいが、最大の願いは野球が楽しいスポーツだと忘れずにいてくれることだ。
「教え子が甲子園に行ったり、プロになったりしてくれるのが一番ですけど、そういうのは一握り。野球を続けてくれたり、続けられなくても『あの時楽しかったですよ』って言ってくれたりする子供たちが増えてくれたら嬉しい。何がきっかけで上手くなるかは分からないので、きっかけになれたらいいなと思います」
■青山浩二(あおやま・こうじ)
1983年8月12日生まれ、北海道・函館出身の38歳。函館工、八戸大を経て2005年の大学・社会人ドラフト3巡目で楽天イーグルスに入団した。野村克也監督の下、1年目から先発、中継ぎで42試合に登板。守護神を務めた2012年は5月の月間MVPに輝くなど61試合で22セーブ、防御率2.51と活躍。初のオールスター出場も果たした。翌13年も60試合に登板して日本一に貢献。15年には通算150ホールド、19年には通算600登板を達成。2020年限りで現役引退した。現役時代の身長・体重は180センチ、80キロ。右投右打。
(THE ANSWER編集部・宮内 宏哉 / Hiroya Miyauchi)