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625登板→戦力外で引退 元楽天38歳、指導者のいま痛感する“妄想力”と星野仙一の偉大さ

現役引退後、楽天野球団のアカデミーコーチに就任した青山さん、指導の難しさも感じていると語る【写真提供:楽天野球団】
現役引退後、楽天野球団のアカデミーコーチに就任した青山さん、指導の難しさも感じていると語る【写真提供:楽天野球団】

「育成契約でもいい」の願いは叶わず引退、愛着ある球団での第二の人生

 ボーっとしている時、頭の中ではいつの間にか他球団のバッターと対戦していることが多々あった。「職業病らしいんですよね。『ここにスライダー投げたら空振り捕れるかな』とか、『このボール使えるかも』とか。妄想するのが好きなんです(笑)」。思いつくとすぐに練習したくなる。筋肉量の多くない自分の体を、100%使えるフォームも常に模索していた。

 考え、実践してみたことはノートや携帯電話のメモ帳に残すのが習慣だった。意識していたのは「人に伝えて同じフォームをやってもらうにはどう書けばいいか」。将来子供に伝えるには、どんな言葉でかみ砕けばいいかを念頭に置いていた。

「これも妄想ですけど、例えば僕が記憶喪失になった時、ノートを見て元通りに投げられるか。同じ状態に戻ることができれば、人に話すときも伝えられるんじゃないかと」

 肩の痛みと付き合いながら第一線で投げ続けた青山さんも、2020年は11試合で防御率4.35。1日3回飲んでいた痛み止めの効きが遅くなり、肩が温まるまでに時間を要するようになっていた。若い選手の台頭もあり、シーズン終盤に戦力外通告を受けた。

 まだ1年はやれる――。そんな思いから「育成契約でも良いのでチャンスが欲しい」と願い出た。ただ、青山さんほどの実績を残した選手に、球団がそのオファーを出すのは難しかった。

「海外も選択肢に入れましたが、コロナも流行っていてちょっと怖いなと。球団から背番号(41)を別の選手に渡したいと話を受けてから、踏ん切りがつきました。15年もやって、やっぱり引くところかな、1つの球団で終わるのもいいんじゃないかなと思えたので」

 第二の人生は、愛着のある仙台をスタート地点にしたかった。「球団に居続けられるのは自分の中でも意味がある」。戦力外通告の際に打診されていた楽天野球団のアカデミーコーチになると決めた。現在は1度に最大40人の子供たちを見ているが、指導者側になって初めて感じることも当然ある。

「自分が子供の頃はプロ野球選手を目指していましたけど、意外とそうじゃない子もいたりするので、1人1人に温度差があります。1対1の指導なら個別に対応できますが、1対40だと上手い子に合わせるか、そうではない子に合わせるかが難しかったですね」

 大切にしているのは、感覚で教えるのではなく、子供たちが学んだことを自分で説明できるようにすること。誰かに伝えることを意識しながらノートを書き続けてきた青山さんだからこそ、どうすれば子供たちの記憶に残りやすいかが分かっていた。

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