ラグビー歴3週間の196cm、130kg好素材も “原石”発掘プロジェクトが面白い
未来の宝を探せ――! こんな趣旨で発足した日本ラグビー協会による「Bigman & Fastman Camp」(京都・同志社大)が23日に3日間のスケジュールを終えた。聞き覚えのない読者も多いだろうが、正式名称はTID(Talent Identification)キャンプ。高校日本代表らユース世代の強化、育成を目的としたプロジェクトの一環として昨年発足したもので、今回が3度目の開催となった。
「Bigman & Fastman Camp」―野澤武史さんが仕掛けた育成プログラムにベテラン記者が潜入
未来の宝を探せ――!
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こんな趣旨で発足した日本ラグビー協会による「Bigman & Fastman Camp」(京都・同志社大)が23日に3日間のスケジュールを終えた。聞き覚えのない読者も多いだろうが、正式名称はTID(Talent Identification)キャンプ。高校日本代表らユース世代の強化、育成を目的としたプロジェクトの一環として昨年発足したもので、今回が3度目の開催となった。
もう少し具体的に説明すると、高校日本代表候補までの評価、実力はなくても、サイズやスピードなどの能力に長けた選手たちに、高いレベルのコーチングを経験させて、育成するのが目的。いわば“原石発掘”プロジェクトだ。仕掛け人は、日本ラグビー協会のリソースコーチを務める野澤武史さん。ラグビー界では本名よりも“ゴリ”という愛称で親しまれる慶応大―神戸製鋼、日本代表でも活躍したFLだ。野澤コーチ自身も、慶応高時代に故平尾誠二さんが立ち上げた一芸に秀でた選手を集めた「平尾プロジェクト」に選ばれた経験を持つ。自らがユース時代に経験した企画を、いまの時代にリニューアルして実現したともいえるプロジェクトだ。
異色のキャンプの誕生には、数年間に渡りU17(17歳以下)世代の強化にもコーチとして携わってきた野澤さんの経験が背景にある。
「U17は、全国を9地域に分けたブロックキャンプがある。その全てのキャンプを3年間まわったんです。そのときに、いろんな選手を見ているんですけど、後で聞くと結構辞めてしまっているんですよね。これは、やっぱり仕組みを作って、助けないとだめかなと思ったのがきっかけなんです」
U17世代の指導で作った全国の高校の指導者たちとのネットワークが、キャンプの実現を後押しした。
「ここだったらデカイ子がいる。あそこにこんな足の速い選手がいる。ブロック委員長にお願いすると、どんどん情報が返ってくるんです。高校代表クラスと比べても、桁が違う情報がくるんです。例えば、身長180センチ、体重120キロという恵まれたサイズを誇る選手がたくさんいるんですよ」
15人の選手が、いかに組織として機能するかが重要なラグビーでは“エースで4番”だけでは勝てないというのが常識だ。だからこそ、27日に開幕する「花園(全国高校ラグビー大会)」には出場できないチームにも、好素材が埋もれている。多くの指導者、関係者が理解していても、本格的に手をつけられなかった問題に着手した野澤コーチの判断と実行力、そして賛同して無給に近い日当でグラウンドに立つ指導陣・スタッフには拍手を贈りたい。