「人間・萩野公介」の問われる真価 北島康介が辿った「選ばれしエースの宿命」
「北島君のために恥ずかしいチームじゃいけない」と思わせた人間力…萩野はどうあるべきか?
「彼は人間としても選手としても素晴らしい人だった。みんなが『北島君がいるから頑張れる』『私たちもできるんじゃないか』と思わせてくれるような人柄。実力的に特別な人だけど、まるで特別でないように振る舞っていました」
北島の波及効果は、チームにとって大きかったという。
「選手たちは実力によって立場が違うから期待値も違う。だけど、金メダルをいくつ持っていても、チームのことをすごく考えてくれていた。ロンドン五輪の時は『北島君のためにも恥ずかしいチームじゃいけない』という感じでまとまっていました」
翻って萩野はどうあるべきか。「もちろん、北島選手をマネする必要はない」と前置きした上で「萩野選手にも、そういう立場になっていってほしい」と期待を込めた。
しかし、競泳といえば、リレー種目はあるが、原則は個人戦。水中は孤独な戦いになる。競泳にとっての「チーム力」は必要なのだろうか。「実は、チームこそがすごく大事なんです」と伊藤氏は力説する。
「こういう国際大会は、ミーティングがたくさんあるんです。それも、全スタッフだったり、コーチ・選手だけだったり、選手だけだったり、男女それぞれだったり……。コーチ、選手だけじゃなく、チームとして目標を共有しているので。ネガティブな選手がいても良くないし、大会も8日間あって初日からの流れも大事になります」