日本バスケ界の先進的クラブ BリーグおもてなしNo.1三河が3年目に記したカイゼン力
「エンタメ下手」と言われた1年目…進化を続けるアリーナエンターテイメント
私が初めてBリーグの試合に足を運んだのは、2017年11月18日。2017-18シーズンの第9節対横浜ビー・コルセアーズの試合だった。毎試合テーマを変えて行われるイベント、アリーナスポーツならではの光、音、映像を使った華やかな演出、チアリーダー「Super Girls」の美しくダイナミックなパフォーマンス、青に染まったアリーナから響く“青援”。どれをとっても想像以上。「ようこそ、シーホースへ」とアリーナに迎えられてから、1秒も飽きさせない“非日常”にすっかり魅了されてしまった。
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だから、三河が1年目に「エンタメ下手」と言われていたとは少し信じられない。それほど2シーズン目には完成されたバスケットボールエンターテイメントが提供されていた。そして3シーズン目、それを上回る「新たな取り組み、新たな演出、新たな座席の提供」を繰り出すカイゼン力に再び驚かされた。
例えば、試合前に行われる「餅まき・菓子まき大会」。愛知県の伝統行事を取り入れた、Bリーグファンにはすっかりおなじみの企画だが、今季は新年最初のホームゲームで来場者全員にお餅を配布し、アリーナ外に設置された「もち焼きエリア」ですぐに焼いて食べられるという子どもから大人までワクワクするような演出を提供。さらに味付けはしょうゆ、きな粉、あんこから選べるという配慮も心憎い。
東京を拠点とする記者仲間に「三河のファンは出足が早いですね」と言われたことがある。その時はあまり気に留めていなかったが、こうした様々なイベントがあることで、試合の前の時間も楽しめるからなのだろう。
リーグ初の試みとして話題を集めた、冬場はこたつ仕様になる「ファミリーシート」など、多彩な席種、斬新な企画チケットで定評のある三河。その「ファミリーシート」も、さらに居心地良く過ごしてもらうため、障子で仕切られた半個室風の空間にリニューアル。周りを気にせず観戦できると小さい子どもがいるファミリーにも好評だ。昨季より席数が増設されたにもかかわらず、毎試合ほぼ完売の人気を博している。
また、シーズン途中の2月には、ワンランク上の快適性を備えた「VIPペアシート」と「スポーツシート」が新登場。「VIPペアシート」ではオードブルとフリードリンクを提供し、サッカーW杯など欧米では定着している、試合観戦と飲食などのサービスを組み合せたラウンジサービスにもチャレンジした。VIPシートを体験したBリーグの葦原一正常務理事も「三河はこたつ席、BOXシートなど多種多様な席種が多く、バスケ界の中でも先進的なクラブ」と絶賛している。
アリーナグルメも、「東海ウォーカー」のグルメブースが出店するなどパワーアップ。人気ラーメン店「担担麺と麻婆豆腐専門店 虎玄」をはじめ、東海地区の美味しいものを知り尽くした東海ウォーカーが厳選したグルメには、毎回長蛇の列ができる。
今季はホームゲーム30試合中11試合が平日開催となった。平日の試合は土日に比べて20%程減少する傾向にあるが、「水曜日の夜にシーホース三河を応援!」略して「水曜シーホース」を毎回開催し、集客に力を入れてきた。特に、チケット代に1000円(当日は1200円)プラスでビール・チューハイ・ソフトドリンクが飲み放題になる「のみほ」は、土日とは違う新たなファン層の獲得に繋がっている。
平日開催の増加、人気選手が移籍、チームの成績も中地区4位と芳しくなかったが、こうした悪条件が重なった中でも平均来場者は昨季2866人から2738人とほぼ変わらず。ブースタークラブ(ファンクラブ)会員数も、2年連続でBリーグ最多を維持しているのは、こうしたたゆまぬカイゼンの賜物と言える。