井上尚弥がスコットランドで起こした衝撃 その時、現地ファンはビールをこぼした
ロドリゲスにはブーイング、井上には大声援が…
横浜アリーナでの初戦はド派手でこってりしていたWBSSの演出だが、この日は意外にもあっさり風味。先に登場したのはロドリゲス。ラテンの軽快なリズムのBGMに乗って現れたIBF王者には小さめの声援とともにブーイングも。理由は直後に判明する。井上が姿を見せると、大歓声が巻き起こった。
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日本からも100人を超える応援団が駆け付けていたが、現地のファンも“モンスター”の登場を今や遅しと待ち構えていたようだ。場内のビジョンに決勝の相手ノニト・ドネアの姿が映し出されると、会場はこの日最初の盛り上がりを見せた。
いよいよだ。過去2試合連続で1ラウンドKOの井上。一瞬たりとも目を離せない。ゴングが鳴った。ロドリゲスはいきなりフルスロットルだ。前に出てプレッシャーをかける。スピードもある。右ストレートのキレもいい。井上が守勢に回るような形になる。この相手は間違いなく強い。おそらく会場の多くはそう直感したのではないか。戦前、井上自身が、陣営が「最高峰の技術戦になる」と語っていた通りの緊迫した攻防が繰り広げられた。
息詰まるような1ラウンドが終了し、これは長い試合が見られそうだな、と感じた。決着は中盤から終盤、もしかしたら判定まで行くんじゃないか――。だが、そんな素人予想はあっさりと覆される。結果はご存じの通りだ。
第2ラウンド。第1ラウンドとは様子が違う。重心を低くし、ロドリゲスとクロスレンジで打ち合う展開に。開始30秒。カウンター気味のショートフックでロドリゲスからダウンを奪う。ああ、これは決まる――。場内のファンの熱気が一気に上がる。まだ終われないロドリゲスも立ち上がる。焦点は一気に変わった。このラウンドで終わるのか、否か。
先ほどのダウンからわずか13秒後。井上が右フックを空振りした次の瞬間だ。左右の連打をボディーに叩き込む。いや、正確には最初は右のフックしか見えなかった。リプレイを見て左も入っているのが見えた。鳥肌が立った。キャンバスに膝をつくロドリゲス。弱々しい表情で首を振る。