「死も同然」の負けから気づいた原点 羽生結弦は壁を越えていく、きっと何度でも―
フィギュアスケート男子でソチ、平昌両五輪で連覇を達成した羽生結弦(ANA)。平昌五輪のポストシーズンとなった今季のハイライトは間違いなく、3月の世界選手権だった。昨年11月のグランプリ(GP)シリーズのロシア杯で右足首を負傷してから約4か月ぶりの復帰戦。23日のフリーでは世界王者のネーサン・チェン(米国)と歴史に刻まれるハイレベルな名勝負を繰り広げた。2年ぶりの優勝はならなかったが、五輪王者の「帰還」と呼ぶにふさわしいものだった。
魂を揺さぶられる4分間、「死も同然」の負けから羽生結弦は何を得たのか
フィギュアスケート男子でソチ、平昌両五輪で連覇を達成した羽生結弦(ANA)。平昌五輪のポストシーズンとなった今季のハイライトは間違いなく、3月の世界選手権だった。昨年11月のグランプリ(GP)シリーズのロシア杯で右足首を負傷してから約4か月ぶりの復帰戦。23日のフリーでは世界王者のネーサン・チェン(米国)と歴史に刻まれるハイレベルな名勝負を繰り広げた。2年ぶりの優勝はならなかったが、五輪王者の「帰還」と呼ぶにふさわしいものだった。
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鬼気迫る表情だった。21日のショートプログラム(SP)で4回転サルコウにミスが出て3位と出遅れた羽生は、あこがれのエフゲニー・プルシェンコ(ロシア)が2003-04年シーズンに滑った伝説のプログラム「ニジンスキーに捧ぐ」をモチーフにした「Origin」に、魂をこめた。
冒頭は五輪連覇のためにマスターした4回転ループ。公式練習で苦戦したジャンプを成功させると、約1万8000人の観衆から大歓声がわき起こった。続く4回転サルコウは回転不足となったが、こらえた。
中盤の4回転トーループは美しく、4回転トーループ―トリプルアクセル(3回転半)の連続ジャンプもきれいに決めると、会場のボルテージは最高潮に。哀愁を帯びたバイオリンの旋律に乗った闘志あふれる滑りに、大歓声や拍手、手拍子が重なり、大きなうねりが生まれる。羽生らしい、見る者を引き込む「劇場型」とも言える演技は、鮮烈な輝きを放ち続けた。今も忘れることができない、魂を揺さぶられる4分間だった。
結果はSP、フリーとも会心の演技を見せたチェンに22.45点差をつけられての敗北。「負けには負けという意味しかないので。はっきり言って、自分にとっては負けは死も同然だと思っている」。羽生らしい言葉で、悔しさをにじませた。
勝負には敗れた。だが、右足首は完治せず、痛み止めを服用しながらの戦い。そして、着氷の仕方を一つ間違えれば再び負傷しかねない状況。万全ではないなか見せた、「美しい」「圧巻」といった一言で簡単に言い表せない演技は、決して色あせることはないし、恥ずべきものでもない。