53失点惨敗発進、若きラグビー日本に露呈した課題「215m-364m」数値で明白 可能性を感じさせた「2」の存在
エディーHCも江良を評価「颯は将来有望な選手」
前半29分に、NZ代表歴を持つ相手No8カレン・グレースへのロータックルでノックオンを誘うと、37分にも再びグレースへのタックルでボールをファンブルさせている。40分には、相手主将のHOカート・エイクランドを、PR竹内柊平(前浦安D-Rocks)とのダブルタックルで仰向けに倒すなど気を吐いた。後半5分のシンビンは、結果的には数的不利の中での失点にも繋がった痛恨のミスではあったが、こちらもデビュー戦だったLOワイサケ・ララトゥブア(コベルコ神戸スティーラーズ)の、お手本のような好タックルを受けて姿勢を沈めた相手選手にヘッドコンタクトになってしまったのがあらましだ。カードによる失点よりも、苦闘の中でも積極的にタックルに挑もうとする姿勢を評価するべきだろう。
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自ら「低さを武器にする」と明言する通り、低さでサイズを克服しようと挑んだ江良に対してはエディーも「颯は将来有望な選手。佐藤(健次=埼玉パナソニックワイルドナイツ)も非常に高いアタック能力を持っているHOです。現在の一番手である原田衛(前東芝ブレイブルーパス)は26歳だが、23歳の颯、22歳の佐藤という3人の若手HOがいるので、今後のW杯2大会でしっかりと活躍出来る世代がいることは素晴らしいことだし、3人共過去最高のHOになる要素を持つ有望株でもある」と期待を込める。
日本代表の恒常的な課題でもある、ラインアウトスローの正確性についても、前半1回の致命的なミスはあったが、拮抗した試合展開の中で一定の精度は見せた。歴代日本代表HOがバックローからの転向組が多くフィールドプレーで目立つ一方で、セットプレー、とりわけスローイングに課題を持つ選手が多いだけに、代表“デビュー戦”での江良のパフォーマンスは次に繋がるものだと感じさせた。
江良以外にも何人かの選手が「次」をアピールするパフォーマンスを見せていたが、敢えて名前を挙げるなら、以前のコラムでも紹介したFLヴェティ・トゥポウ(静岡BR)、LOララトゥブアの2人が、チームで期待されるフィジカリティーを証明し、トゥポウはスピード、ララトゥブアはワークレートの高さというそれぞれの持ち味を垣間見せた。さらに「超速」でのプレー精度を磨けば、テストマッチデビューに相応しい資質は十分期待出来る。
エディーは6月30日の取材対応で、ウェールズ戦へ向けてこんな展開を語っている。
「新体制になったウェールズは、カーディフ(ブルーズ)のスタイルでもあるサイドサイドにボールを振るスイングアタックを使ってくる。そこにSHがキックを多用してくるので、我々としてはハイボールの処理、そしてキックオフレシーブ、そしてブレークダウンのところが重要になってくると思います。試合では最初の20分のところで速い仕掛けで戦い、中盤のパワーコンテストで相手をどう崩していけるか。そこも練習で取り組んでいます。この時間帯では“キシュウコウゲキ(奇襲攻撃)”を駆使して、相手にコンタクトを仕掛けて、ボールを動かし、状況に応じて裏に蹴り込んだり、コンテストストキックも使っていく練習にも着手しています」
超速ラグビーを体現するための奇襲も交えたアタックが出来れば、勝機も出てくる小倉での注目の80分。先ずは、先週末に優位に立てなかったブレークダウンでのファイト、そして防御の破綻をどこまで修正出来るか、そしてMAB相手には成功率100%の数値を残したスクラムの安定が、「奇襲」をより効果的に生かす前提になる。
(吉田 宏 / Hiroshi Yoshida)
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